すなわち、中国人にとって“炭水化物祭り”の「ファミレス」のメニューは、腹を満たすためのメニューにしか映らず、結果、単に“割高な食堂”としてのポジションに甘んじてしまったのである。

 (3)食のトレンドに合わなかった

 市場開放により、多くの新しい食文化が持ち込まれ多様化が一気に進んだ中国だが、そもそも食文化とはかなりコンサバティブなものである。

 表向き、その市場と習慣は大きく変貌を遂げたように映ったのだが、実は皆が想像する以上に食の西洋化は進まなかったのだ。

 それを裏付けるように、中国の外食市場における外国料理のカテゴリー比率は1%にも満たないというデータがある。

 これは、日本のそれ(13~14%)と比較しても、極端に少ない数字である。

 中華料理が常にさまざまな要素を受け入れ多様な進化を続けていることが、新たな食文化を容易に定着させない要因の一つになったことは、注目に値する現象と言える。

 すなわち、食の西洋化はそれほど進まなかったものの、中華料理の国際化が進んだのである。

●成功している「ファミレス」もある 「サイゼリヤ」は人気

 しかし、中国で全て「ファミレス」が撤退に追いやられていたわけではない。数少ない、成功を収めているチェーンの一つが「サイゼリヤ」である。

 では、多くのファミレスチェーンが撤退に追いやられる中、なぜ「サイゼリヤ」は成功することができたのだろうか。

 1.専門性の明瞭化

 一般的な「ファミレス」と「サイゼリヤ」の大きな違いは、そのコンセプトにある。

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