◎チャリティ活動の支援

 財団や基金の設立サポートは海外のプライベートバンク各社もかなり注力しているサービスで、それは裏を返せば、海外の富裕層にとって慈善活動はそれだけ大きな意味を持つということです。

 日本でもサントリーやベネッセのオーナー家が財団を設立しているのは有名な話で、財団が同社の大株主にも名を連ねています。たとえばベネッセの大株主の福武財団は、同社最高顧問でありオーナー家の福武總一郎氏が個人資産を寄贈し、設立したものです。美術館運営などを通して地域文化や芸術の発展に貢献しています。

 またソフトバンクグループの孫正義社長は、2016年末に自らの私財で海外留学を支援する「孫正義育英財団」を立ち上げ、iPS細胞の研究でノーベル賞を受賞した山中伸弥教授が副代表理事を務めています。

 同財団が公表している資料の評議員一覧を見ると、野村ホールディングスとスイスの老舗プライベートバンク、ジュリアス・ベアのCEOが名を連ねていることがわかります。推測の域を出ませんが、特に後者のジュリアス・ベアについては財団設立に関わっていることが予想されます。

 富裕層が財団を設立する動機は「社会貢献」が主たるものであることは間違いないものの、「社会的評価」や「税金対策」といった思惑も混ざっていると考えるのが自然でしょう。

●『プライベートバンクは、富裕層に何を教えているのか?』の4つの目的

 私が『プライベートバンクは、富裕層に何を教えているのか?』を執筆した目的は4つあります。

 1つ目は、「1億円の壁」の向こう側にいる富裕層の実態をつまびらかにすること(第1章)。一言で富裕層といってもいくつかのパターンに分けられることを知っていただきたいと思います。

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