この論争は一見すると、反ヘイト派に正義があるように思える。なんぴとたりとも民族や国籍によって差別すべきでない、というのは絶対的な正義だからだ。だから今回の件も、日本人ではないというだけの理由で水原希子の起用を批判しているのなら、それはヘイト行為であり差別であり、許されるものではない。

 しかし批判派の言い分を聞いてみると、これは単純に差別やヘイトとは言い切れない部分もある。そもそも、日本企業のCMで日本人でない(外国人の)キャラクターを起用しているCMは他にも数多い。しかしそれらに対して、「日本人を使え」という批判が出たことなどまず聞いたことがない。しかるになぜ、今回の件では「エセ日本人」とか「日本人を使え」などの批判が出ているのか。

 反ヘイト派は、水原希子の母親が韓国人であることから、いわゆる韓国人差別、朝鮮人差別と見る向きもあるだろうが、これまでも在日韓国人であることを明らかにしているタレントが大企業の大々的なキャンペーンモデルに起用された事例もあるが、こちらも「在日だから」という理由での批判は起きていない。

 たとえば当のサントリーでも、ウイスキー角瓶のCMに井川遥を起用しているが、彼女は自身が在日韓国人であることを公表している(結婚後に日本に帰化)。出自が理由で批判が起きるなら、井川遥を起用した角瓶のCMにも批判が起きるはずだが、こちらのCMは井川遙メインでシリーズ化しているところをみれば、批判が起きるどころか好評であることがわかる。

 これらの事例から考えてみれば、今回の炎上事件は国籍や民族的なことが原因で炎上した、単純な差別・ヘイト事案であるとは考えにくい。そうではなくて、水原個人の要因が炎上の原因になったと考えられる。

●他のSNSとはまったく違う twitterという世界

 そもそも水原希子という人は、炎上芸を得意とする人で、これまでも自身のSNSを中心に挑発的な行動を取って炎上騒ぎを起こしてきた。例えば、人気男性芸能人との交際をわざわざアピールするかのような投稿を行って騒ぎを起こしたこともある。それらの行動の中には、ネットにはびこる右翼、いわゆるネトウヨの標的になるような行動もある。

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