売上高の合計が50兆円を超える最強の企業集団、三菱グループの異変はこれにとどまりません。

 昨年に燃費不正問題で三菱自が3度目の経営危機に陥った際、御三家の重工、銀行、商事から支援を受けるという従来の枠組みから離れ、同業である日産自動車の傘下に入る決断が下されたのです。

●長兄の経営にも異変、次のグループ支援は不振の重工か

三菱自の日産傘下入りをめぐっては、商事と銀行が副社長ポストに幹部を派遣したのに対し、グループの長兄に当たる重工は幹部の派遣を見送り、一歩引いた格好です。背景には自らの経営不振も影響していたとされます。

 重工の17年3月期決算は売上高が前期比3%減の3・9兆円で、営業利益は前期から半減の1505億円。「17年度に売上高5兆円」の目標は2年先送りされました。

 社運を懸けた純国産航空機MRJでは5度の納期延長に追い込まれ、開発を担う子会社の三菱航空機は債務超過に転落しました。累積損失額は1510億円に達し、開発費の膨張、遅延の補償負担で重工への打撃も避けられません。

 今年ようやく引き渡しが完了した大型客船事業も失態続きでした。受注額が約1000億円の案件なのに、累計で2500億円の損失を計上、今後の受注も凍結されてしまいました。

 ある金曜会企業幹部は「1.5兆円あった有利子負債の圧縮が進み、すぐに危機に陥ることはない」と前置きしながらも、「次に三菱グループの結束力が試されるのは、経営不振に陥った重工を支援するとき」と真顔で語っていました。

「組織の三菱」を体現してきた御三家によるグループ指導体制にほころびが見える中、来年度には三菱系各社が集まる東京・丸の内の「三菱村」に重工本社が移転してきます。ただ、グループの距離感は逆に遠くなるかもしれません。

(『週刊ダイヤモンド』副編集長 山口圭介)