一般に高血圧と診断される基準は、年齢にかかわらず上の血圧(収縮時血圧)が140、下の血圧(拡張時血圧)が90。ただ、加齢とともに生理的に血圧は上がっていき、高齢者は血圧がすごく低い人の方がその後の寿命が短い傾向がある。そのため年齢によって血圧の管理基準はやや異なる。

 75歳以上の高齢者の管理基準は、上150未満、下90未満と少し緩く、この範囲なら降圧剤を4種類も5種類も飲んで無理に下げるのはやめた方がいい。高血圧薬の一種、ループ利尿薬、α遮断薬、β遮断薬は副作用を起こしやすいので、高齢になったらできれば使用を控えたい。

 もっとも、血圧を下げる薬を飲むのか飲まないのか、飲むとしたら血圧をどこまで下げたらいいのかは、個々の老化度や体の状態によって異なる。これまで心疾患を起こしたことがある人や糖尿病患者は上130、下80、脳血管障害を起こしたことがある人は上140、下90と、高齢者であっても少し厳しめの基準がある。

 脳卒中や動脈硬化を予防するために飲むコレステロールを下げる薬は、高齢になったら使わなくてよい場合が多い。75歳以上の人がコレステロールの薬を飲んだからといって脳梗塞が減ったというデータは、どこにもないのだ。

 糖尿病についても、高齢者に血糖を下げる薬でどこまで血糖値を下げる治療をした方がいいのか、本当のところはよく分かっていない。むしろ血糖を下げ過ぎない方が長生きするという指摘もある。

 ただし、決して独断で薬をやめないこと。薬をどうするかはその人の老化の具合や病気の種類、置かれた状況などで違う。100人いれば100通りの薬の飲み方がある。薬のやめどきも、やめ方もさじ加減が大事なのである。ポイントは薬に依存しないことだ。

(週刊ダイヤモンド編集部)