だが費用対効果が最も高いのは――もちろん痛みは伴うが――失敗したときだ。たった5日間の作業で重大な欠陥を発見できるのは、効率の極みだ。実地の経験を通して、しかも手ひどい損をこうむらずに学習できるのだから。

とにかく実践的に「やり方」を教えよう

 GVはファンデーション・メディシン(高度ながん遺伝子検査の企業)、ネスト(スマート家電のメーカー)、ブルーボトルコーヒー(もちろん、コーヒーのメーカー)などの会社とスプリントを行ってきた。

 新規事業の実行可能性を評価したり、新しい携帯用アプリの初期バージョンをつくったり、数百万のユーザーがいる製品を改良したり、マーケティング戦略を決定したり、医療検査報告書をデザインしたりするのに、スプリントを活用している。スプリントは次の戦略を練る投資銀行にも、自走車をつくるグーグルのチームにも、数学の大きな課題にとりくむ高校生にも役立っている。

 あなたもこの本を独習ガイドにして、ビジネスの重大な問題に答えを出すために、自分なりのスプリントを行ってほしい。

 月曜日に問題を洗い出して、どの重要部分に照準を合わせるかを決める。

 火曜日に多くのソリューションを紙にスケッチする。

 水曜日に最高のソリューションを選ぶという困難な決定を下し、アイデアを検証可能な仮説のかたちに変える。

 木曜日にリアルなプロトタイプを完成させる。

 金曜日に、本物の生身の人間でそれをテストする。

 この本は小難しい理論は抜きで、細かいところまで掘り下げてやり方を説明する。これを読めば、いま一緒に働いている人たちの中から完璧なスプリントチームを選抜する方法がわかる。大きなことや(チームの多様な意見と1人のリーダーのビジョンの両方を最大限活用する方法など)、中くらいのこと(チームが3日間連続でスマホとPCをオフにしなくてはいけない理由など)、細かいこと(ランチを午後1時に食べなくてはならない理由など)を学べる。

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