ある主力取引銀行幹部は「メーンバンクが東芝を支える根拠は半導体」と本音を漏らす。4月1日に分社した東芝メモリの企業価値は「少なくとも2兆円」(綱川社長)。純資産は5000億円程度のため、2兆円で売却できれば1兆5000億円の売却益が見込め、6200億円の債務超過の穴埋めに充てられる。

●過小資本解消のため資産売却が不可避も有力候補少なく

 中核事業として位置付けていた海外原子力と半導体フラッシュメモリーの2事業を切り離す東芝は、今後社会インフラを軸とした「新生東芝」として再建を進める。

 エレベーターや空調など「社会インフラ」、火力・水力・国内原子力など「エネルギー」、車載向け半導体など「電子デバイス」、情報システムの「ICTソリューション」という4分野で、16年度に5.5兆円だった連結売上高は、17年度に3.8兆円にまで縮小する見通しだ。

 ただ、半導体メモリーを売却して債務超過を穴埋めしても、資本不足には変わりない。このため「今後も聖域なき資産売却を検討していく」(綱川社長)方針。

 【図1】で示したようにすでにスマートメーター子会社ランディス・ギアの売却準備に入った。また、上場子会社の売却も進む見通しだ。保有上場株の中では、フラッシュメモリーの部品調達元の群聯電子(ファイソン・エレクトロニクス)は、保有を継続する意義に乏しく、有力な売却候補になりそうだ。だが、これら売却が一巡すれば、残りはほとんどが数十億円規模の資産で、めぼしい候補はなくなる。

 自己資本の積み上げには、社会インフラを中心とした事業構造で着実に利益を計上することが必須。だが、WH切り離しを前に急ごしらえで作り上げた新生東芝の計画が再び頓挫すれば、一段の資産売却を銀行から迫られることになり、非上場子会社の東芝エレベータ、東芝キャリア、東芝ライテック、東芝ソリューションといった中核資産も売却対象になり得る。海外原子力と、半導体の切り離しに続き、「解体」が加速する東芝には、長い隘路が待ち受ける。