過去のニュースを俯瞰してみれば、大人がツイッターでひどい発言をして炎上するケースも多数起きている。決して大学生だけの問題ではないだろう。

 さらに昔から今に至るまで、たとえば政治家が差別・中傷的な発言をして、それが大問題になるケースは後を絶たない。また、最近では新潟県の小学校教諭が福島県から避難してきた子どもを「菌」と呼んでいたこともあった。

 こういったモラルなき発言は、大人の世界でもたくさんある。それがツイッターに載ったか載らないかの違い、もっと言えば、それを誰かがネットやニュースで取り上げたかどうかの違いだけで、決して大学生に限った"傾向"ではない。

「学生の場合は、まだSNSやモラルについて教育するチャンスがあります。でも大人は自分で学ぶしかありません。さらに社会人となれば、一度の炎上で自身の職に影響が出るでしょう。ずっとダメージは大きくなります。だからこそ、大学生に限った問題ではなく、自分自身に警鐘を鳴らすきっかけとして捉えるのが良いのではないでしょうか」(山口氏)

●社会全体に共通するこの問題をどう捉えるか

 今回、大学生に調査した印象では、冒頭のような炎上事例はレアケースだと感じた。多くの大学生はそういった発言を「あまり見ない」と話しており、ツイッターの使い方についても、きちんとしたモラルを持っていたように思う。「デジタルネイティブ」と呼ばれる世代だけあり、むしろその点の意識は強い気がした。

 ひるがえって「モラル」だけに観点を当てれば、それは近年の大学生が特別ひどいわけでもなく、全世代において問題は存在している。大学生の集団強姦が盛んにニュースで取り上げられるが、実際には、いたるところで、いたる世代の人々が痴漢や強姦を起こしている。普遍的な課題だ。

 大学生のツイッター炎上に関するニュースを見たとき、筆者は「最近の大学生はひどいな」と反応してしまった。しかし、その視点は「大学生」というわかりやすいカテゴリに問題を当てはめようとしただけで、決してそんな単純な話ではないだろう。

 ツイッターを含むSNSの使い方について、さらにはもっとシンプルな「モラル」という問題について、社会全体に共通する問題として考えたいと思う。(取材・文/有井太郎、編集協力/プレスラボ)