「極めて否定的な結論を「否定して」計画は続行されました。膨大な追加資金が投入され、たった一六機を国営航空会社向けに納入後、一九七六年には製造中止になりました(途中で指摘された通り売れなかった)」(『「超」入門失敗の本質』より)

 築地移転の問題で例えるなら、すでに投下してしまった建設費用や移転延期費用を惜しむことで、汚染土壌に何ら対策を施さないで豊洲への移転が強行されてしまうことでしょう。このような行動は、「汚染土壌になにもせずとも、将来にわたって問題は発生しないだろう」という、こうあって欲しいという共同幻想があれば成り立ちます(ただし、この賭けの結果は未来にしか判明しない上に、調査結果からも分が悪い)。

 もちろん、様々な選択肢があり、同時に築地の移転問題は重い決断です。一つ言えるのは、食品を扱う卸売市場として、信頼を高めた形での決着が理想だということです。

 そのためにあえて、汚染土壌の対策に追加的な高額費用がかかるとも、移転を実施するべきか否かです。築地市場は東京を含めた関東の台所として長く機能し、国内・海外からもその食の美味しさを求めて多くの観光客が集まっています。

 安倍政権も、海外からのインバウンド(訪日旅行客の需要)を観光政策として重視しており、日本の食の魅力は大切な要素の一つのはずです。食の魅力は美味しさとともに安全性や信頼性にあり、それを高めることも市場移転の重要課題のはずです。

 誤った空気を助長する共同幻想に左右されず、市場移転問題を解決できるのか。小池新都知事の手腕次第で、単に行政組織だけでなく、ビジネスパーソンにとっても良い手本になるか、新たな悪い見本となってしまうか。その決断と対策にかかっているといえそうです。(経営戦略コンサルタント・鈴木博毅)