漬物加工などは、付加価値をつけるためだけだと思われがちですが、漬物は本来保存食。一度に多く穫れすぎた野菜を漬物にすることで、売上のピークをずらすことができるメリットがあります。もちろん、多少見た目の悪いものも、漬物にすれば活用できるのでムダが出ません。

 また、野菜の単品販売はせず、野菜セット(2000円〈税抜〉~)にして販売していますから、野菜をこちらが選べるのでムダが出にくくなります。そして、売上の中心となっているネット販売は、言い替えれば常に予約販売です。その日の野菜セットの発送分だけ収穫すればいいので、店頭に並べて古くなった野菜を廃棄するようなロスがなくなります。なにせ野菜は畑に置いておくのが一番新鮮なのですから。

 廃棄するということは、1円にもならないどころかそれまでの生産活動、かかった原価もムダにするということ。廃棄率をゼロにすることは、売上、所得(利益)アップに直接つながるのです。

●石川県能美市にある「日本一小さい農家」からのメッセージ

 このたび、『農で1200万円! ――「日本一小さい農家」が明かす「脱サラ農業」はじめの一歩』を出版しました。

 私の農園はきていただくと、みなさん「本当に小さい」と声をあげます。農地面積が通常農家の10分の1以下、30アールの面積(だいたいサッカーコートの半分くらい)で、自他ともに認める「日本一小さい専業農家」(本書では「日本一小さい農家」)です。

 バーテンダーを3年勤め、その後オーストラリアへ1年の遊学を経て、ビジネスホテルチェーンの支配人業に就きました。しかし、あまりの「ノルマ主義」「前年対比主義」に身も心も疲れ果て、逃げ帰るように、郷里の石川県に帰ってきた次第です。サラリーマンとしてはダメダメでしたが、そこから一念発起。サービス業の視点で見ると、ビジネスチャンスがあるのではと考え、農家に。

 そんな「知識ゼロ」で起農したのが1999年。

 ただでさえ厳しいと言われる農業。まして農業技術もない、右も左もわからない状況で普通にやっていては、ひとたまりもありません。そこで、最初に始めたのが、農業の常識を疑うこと。

 今の農業の常識と言えば……

「農業は儲からない」
「農業を始めるには、農機具・設備費など莫大な資金が必要」
「補助金がないと成り立たない」
「農業技術を習得するには時間がかかる」
「広い土地がないと無理」
「人手が必要」
「天候により収入が不安定」
「自然相手なので休みがない」

 と大変なことだらけ。

 そんな常識の中でも、まっ先に疑ったのが、農業で売上を上げるには大規模化しないと無理ということ。そこで小さくても、いや小さいからこそできる農業があるのでは?と思って生まれたのが、スモールメリットを活かす農業です。もちろん、小さいだけではなく、サービス業についていた経験を活かしての加工、直売も手がけ、また、ネット活用など、今だからこそできる農業を心がけました。

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