「対応原則」が示唆しているのは、私たちは自分の性格特性に合った状況に引き寄せられるが、そのような状況に身を置くことで、その性格特性がさらに育まれ、強化され、増幅されるということだ。この関係は、好循環と悪循環のどちらにもつながる可能性がある。

 たとえば、ロバーツが行ったある共同研究では、ニュージーランドの数千名の青年たちが、やがて成人して就職するまで追跡調査を行った。その結果、敵愾心の強い青年たちの多くは社会的地位の低い職業に就いており、生活費を稼ぐのにも苦労していた。そうした状況のせいで、さらに敵愾心が強くなり、ますます就職が難しくなっていた。

 それとは対照的に、人付き合いのよい青年たちは、人格形成の好循環を経験していた。好青年たちは社会的地位の高い職業に就き、経済的な安定も手にしていた。そして、そのおかげでますます社交的な性格になっていた。

「やり抜く力」については、「対応原則」の研究はまだ行われていない。

 だが、ここはひとつ考えてみよう。自分でレーズンの箱を開けられず、「こんなのムリだもん!もういいや!」とつぶやいた女の子は、何でもすぐにあきらめる悪循環に陥ってしまうかもしれない。新しいことに手を出してはすぐにやめることの繰り返しでは、好循環に入るチャンスを逃してしまう。

 好循環とは、「もがきながらも努力を続けることが進歩につながり、それによって自信が生まれ、もっと大変なことにも挑戦できるようになる」ことだ。

 では母親が、大変なのは承知のうえで、小さな娘にバレエを習わせた場合はどうだろう?レオタードに着替えてレッスンを受けるのは、娘にとっては面倒で、最初のうちは楽しいとは思えないかもしれない。しかもこのあいだのレッスンでは、「腕の伸ばし方がちがう」と先生に叱られて、ちょっぴりつらかったようだ。

 しかしそんな女の子が、厳しい指導のもとで何度も練習を続けるうちに、ある日のレッスンで、ついにうまくできたときの達成感を味わったとしたら?小さな勝利が励みになって、ほかにも難しいことを練習してみようと思うのではないだろうか。大変なことにも果敢に挑戦するようになるのではないだろうか。