現在、アメリカの短期大学および大学の中退率は、世界でもっとも高いレベルにある。授業料の上昇に加え、学資援助のシステムが複雑きわまりないのがおもな原因だ。さらに、学力が著しく不十分でついていけないという別の問題もある。

 しかし、経済的に厳しく、SATのスコアが低い生徒たちは、誰もがみな中退してしまうわけではない。どんな生徒ならがんばって卒業し、学士号を取得できるのか。どんな生徒は卒業できないのか。それを予測するのは、社会科学においてもっとも大きな懸案事項のひとつであり、いまだに納得のいく回答を出した者はいない。

 ビル・ゲイツとメリンダ・ゲイツとのミーティングで、私は自分の見解を述べる機会に恵まれた。そこで私は、高校のときに大変なことを最後までやり通すことを学ぶのが、おとなになってから大変なことをやり遂げるために、なによりの下地になると思うと述べた。

 すると、そのあとの会話のなかで、ビルも以前から、才能以外の能力の重要性を高く評価していたことがわかった。

 彼が以前マイクロソフト社で、ソフトウェアプログラマーの採用に、いまよりもっと直接的に関わっていたころには、選考試験の課題として、単調なトラブルシューティングにひたすら何時間も取り組む問題を出題していた。

 この試験で問われるのは、IQやプログラミングスキルの高さではない。それよりも、粘り強く黙々と問題に取り組み、最後までやり遂げる能力を試すものだ。ビルが採用したのは、課題を最後までやり遂げたプログラマーだけだった。

●「複数の活動」を最後までやり通す

 ゲイツ財団の寛大な支援を得て、私は1200名の高校3年生を対象にアンケート調査を実施した。ウィリンガムの研究と同様、「なにか課外活動を行っているか(行っている場合は、具体的に回答する)」「課外活動を行っている場合は、どのような実績を収めたか」について、質問を行った。

 この調査に使用した表は、格子(グリッド)状であることから、研究所ではしだいに「グリット・グリッド」と呼ぶようになった。ウィリンガムの研究事例にならって、私の研究チームでは「複数年におよぶ活動」(2つまでカウントする)と「実績」を数値化することでスコア(評価点)を算出した。

 具体的には、2年以上行った活動がある場合は、ひとつにつき1ポイントを獲得する(1年しか行っていない場合は0ポイントとなり、その時点で計算作業は終了)。

 複数年にわたって活動を行い、そこで何らかの実績を収めた場合は(生徒会の役員を1年務めたあと、翌年は会計係を担当するなど)、2ポイント目が加算される。

 最後に、実績が著しく顕著な場合は(生徒会長を務めた、バスケット部のMVPや月間最優秀スタッフ賞を受賞したなど)、3ポイント目が加算される。

次のページ