それは、知識ゼロ、経験ゼロで始めた「脱サラ農家」が、家族みんな笑顔でそこそこの収入を地方で幸せに稼いでいる。その秘訣を知りたいようなのです。

 この「幸せに稼いでいる」というのがポイントではないかと思っています。

 現在、ビジネスパーソンを取り巻く社会情勢はますます厳しさが増しています。非正規雇用の増大、東芝、シャープのような大企業であっても経営不振に陥る時代。社会保障費も減額され、年金もどれだけもらえるかわからないなど先行き不安だらけです。

 これまで就農や農的暮らしというと、売上・利益度外視の自然回帰、あこがれという部分が大きかったかもしれませんが、これからは将来への“第2の井戸(収入源)”として、安心感の醸成、将来不安のリスク分散ととらえる――そんな時代になってきたと思います。

 文字どおり地に足をつけ、直接「食」を得られる「農」は、何にも代えられない安心感がありますし、定年はなく、身につけた知恵は誰にも奪われません。特別じゃない、リアルな選択として気づいた人は、どんどん農に向かってきています。経験もない、資金もない、大きな農地もない、販売ルートもない――そんな“ないないづくし”の元会社員が、ゼロから起農したからこそ、固定概念にとらわれず、農にチャンスを感じられました。

 現在会社員で農にあこがれはあるが、敷居が高いと感じている方、農家になったけど、なかなかうまくいっていない方、新たなビジネスの芽を探している方、また、定年後に不安をかかえている方に、『農で1200万円!』が少しでもお役に立てればと思っています。

 実際、風来に話を聞きにきて起農している人が全国にいます。ただし、風来では、長期研修を受け入れたことがありません。

 どういう意味かというと、技術ではなく考え方次第で、小さくても農業で稼ぐことができるということです。もちろん、技術も大切ですが、技術が最優先するのなら、“技術ゼロ”から始めた私が今こうしてやっていられるはずがありません。

 新規就農時の研修で車を路肩に何回も落とし”脱輪王”の異名をつけられ、何度も「落第!」と言われた私でもここまでやってこれました。そんなこれまで培ってきた考え方、気づいたこと、実践してきたことを、新規就農者や農家仲間の事例も併せて、余すところなく『農で1200万円!』で紹介させていただきました。

 農の無限の可能性を感じていただき、農で幸せに稼ぐ人がたくさん出てくる。本書がそんな手助けになればと願っております。