しかし、PS4で成功したソニーもポータブルゲーム機は振るわない。PSPの後継として出したPS Vitaは任天堂3DSほどのヒットにはならず、一時期「PlayStation Mobile」というスマートフォンでのゲーム配信事業にも参入したが、2015年に撤退している。

 ソニーのスマホゲームの失敗は、優良コンテンツを自社のプラットフォームに囲い込み、PlayStation Mobileにはヒット作となり得る優良コンテンツを提供しなかったことにある。

●ハードウェアにこだわるソニーと「遊びの変化」を重視する任天堂の差

 ここにソニーと任天堂の差が生じている。ソニーはハードウェアメーカーであり、ゲーム機についてもゲームそのものよりハードウエアが前面に出ている。一方任天堂は、花札、トランプから出発した娯楽企業であり、技術やハードウェアを提供することが第一義ではないという伝統がある。

「自分はゲーマーである」と言っていた岩田聡前社長が急逝する直前にDeNAとの提携を発表したことからも、自社のプラットフォームにソニーほど強いこだわりはないように見える。

 任天堂もソニーもゲーム機は時代によって進化を続けているが、自社の技術進化をゲーム機に反映させるために新たなゲーム機を発売してきたのがソニーであったのに対し、任天堂は十字キーで操作する既存のゲームとは異なる遊び方を実現するために、WiiやDSを発売してきた。目的をハードウエアの進化ではなく、「遊び方の変化」に置いていたのが任天堂であろう。

 任天堂には、ハードウェアの技術蓄積はない。ファミコンの時代から、技術は既存のエレクトロニクスメーカーの協力の下で開発してきた。だからこそ、自社の技術やプラットフォームに縛られるという呪縛から、逃れることができたのかもしれない。

 ゲーム市場は大きな岐路に立っている。専用機を必要とするVRのブームに火がつきつつある一方、ポータブルゲームはスマホに移行している。こうした中で、後発参入の任天堂は既存の自社のポータブルゲーム機のプラットフォームにこだわらず、またDeNAとのスマホ向けゲーム開発提携にすらこだわらなかった。今回Google発のスピンアウトベンチャーと組むというフリーハンドぶりが、任天堂の強い武器になっているのではないか。

「ポケモンGO」についてはバブルとも言える大フィーバーぶりで、それが一段落した後に人気が継続するのか不安は残る。しかし、それはそれで良しとするのが任天堂らしさかもしれない。次々と新たな協力企業と組み、多様な商品やサービスを展開し続けることが、気まぐれな顧客に対応するために大切なことであり、自社の成功経験にしがみつかない方が良いだろう。

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