●バズフィードが暴いた米政府による空からの監視の実態

 同じくオンラインの人気メディアである「バズフィード」は、今年4月の記事で「どれだけ米政府のサーベイランス(監視)が空から行われているのか」を、データで示した。

 アメリカでは毎日、連邦捜査局(FBI)や国土安全保障省(DHS)の複数の航空機が都市の上空を飛んでいるのだが、それらには高精度のカメラはもちろんのこと、携帯電話信号を追跡できるデバイスが積み込まれ、場合によってはVRを利用して、特定の場所の道路や建物を見られるようにもしているという。

 バズフィードは、あらゆる航空機の航路を追跡するサイトのデータから、200機の政府関連の飛行機を特定し、昨年後半のおよそ5ヵ月間にそれらが飛行した軌跡を日にちを追って見られるようにビジュアライズした。

 それを見ると、FBIとDHSがいつ、どの地域に関心をもっていたのか、どのあたりで飛行が集中していたのかなどがわかる。

 この記事では、そのデータをさらに詳細に分析し、昨年12月にカリフォルニア州サン・バーナディーノで起こった襲撃事件前後の動きを追っている。それによると、「9.11」以降、カリフォルニア州の当周辺地域にはサーベイランス飛行がたくさんあったにも関わらず、サン・バーナディーノ自体は見過ごされていたことがわかるという。だが、事件後は、容疑者が通っていたモスクを偵察する航空機の軌跡が明らかにわかるという。

 上記のような大きな規模でない報道組織のデータジャーナリズムにも、別の賞が設けられており、それを受賞したのが「コンヴォカ」というペルーのメディアだ。調査報道記者やデータ分析家らからなる新しい組織である。

 同メディアが制作したのは、国内で過剰な鉱業採掘が行われて環境が破壊されている地域と、それに関わる企業がわかるようにしたものだ。同メディアは、10ヵ月かけて情報を集め、関係者にインタビューをしてデータを収集した。これで、地元住民にとっては搾取的な企業活動による環境破壊の実態が、初めてシステマティックに把握できるようになったという。

 こうした例を見ていると、データの強さと共に、それを扱う人間の判断力や行動力が試されていると感じる。ジャーナリズムも非常に新しい時代に突入している。