中国人デザイナーは「長い爪」もパンダの特徴の1つにとらえるようだが、これを許してしまえば本来のハローキティではなくなってしまう。やはりハローキティは「かわいらしさ」がいのちだからだ。

 サンリオウェーブ企画営業部の矢野啓治氏は「カルチャーの違いを互いにすり合わることがこのビジネスの最大のカギになる」と語る。「幸いにパートナー企業は日本の著作権の厳しさを理解してくれています。キャラクター保護に配慮してもらいながら、共に事業を進めているところです」(同)。

 このように、現地では少ないながらも意識改革が進む中国企業が出始めており、ライセンスビジネスの追い風になっている。

 また、中国では若者を中心に日本のアニメコンテンツブームが盛り上がっているが、矢野氏によれば「明らかに彼らはニセモノよりホンモノに高い価値を求めている」と言う。中国の消費者の意識も徐々に変わりつつあるのだ。

●イメージ悪化を嫌う中国 背景に「一帯一路」構想

 知財保護に力が入る上海市では、専門人材の育成にも乗り出している。すでに上海では一部の大学内に「知的財産学院」や「知的財産交易センター」といった機関が設けられ、近い将来これに「国際知的財産学院」が加わる予定となっている。

 以前は、この上海市でも知財保護といえば、“見せしめ程度”に公安が摘発する程度の緩いものだった。「コピー品撲滅」と掲げた赤い横断幕の下で、シャネルやルイ・ヴィトンのバッグが売られる風景はまさにその象徴だった。「人材育成」はそれからすれば一歩も二歩も前進した形だ。

 近年、中国にとって知的財産権はよりいっそう戦略的な位置づけになってきている。中国は2011年に世界の特許出願件数で、米国を抜いて1位となった。商標登録申請では14年連続で世界一だといわれているのだ。しかし、商標登録について中国は件数こそ多いが、その質は低い。国際的な有名なブランドに欠けるのは今の中国の泣き所でもある。

 他方、中国は今、アジアと欧州をつなぐ新シルクロード政策「一帯一路」構想を着実に進展させるべく、「メード・イン・チャイナ」のイメージづくりに力を注いでいる。いずれ、「一帯一路」構想の沿線国が中国産の商品の売り先になるからだ。しかし、「ふたを開ければ、中国製のほとんどがコピー品」というのでは、国際社会の頂点を目指す中国のメンツが丸つぶれだ。

 上海ディズニーランドを契機としたコピー品撲滅運動は「一時的だ」という見方もあるが、野放し状態が続くことはないだろう。中国にとってコピー品は目の上のコブであることは明らかであり、国家大願の長期戦略を成功に導くにはコピー品の撲滅が大きなカギとなるからだ。