中国にも工場を持つ都内のある中小工作機メーカーは、2014年12月末、長年くすぶっていたコピー品の裁判でついに勝訴した。被告の中国メーカーは見た目では識別できないほど精巧なコピー品を生産し、総合カタログまで制作して販売していたという。

「商標権侵害で日本企業が中国で勝訴することは不可能」というのがこれまでの常識だっただけに、経営者の喜びもひとしおだ。「この裁判では堂々と正面から闘って勝つことができました」と胸をなでおろす。

 中国で知財関係の侵害調査や摘発手続きを行う弁護士事務所によれば、「知財裁判は最近まともになってきた」という。

「近年では知財専門の裁判官も育ってきており、最近は、明らかにおかしい裁判というのは減ってきています。ここ5年間で相当レベルが上がったといえます」(同)

 背景の1つに、2014年5月の商標登録法の改正がある。中国ではこれを転換点に、手続きが迅速になり、商標制度に対する国際基準が導入され、正当な権利者に対する保護が強化されるようになった。

 ちなみに、これには「政治を除く」という限定条件が加わる。国有企業相手など「政治にかかわる裁判」は、いまだ公平性に疑いが残る裁判は多い。

●長い爪のキティちゃんはNG 知財保護意識の向上で新ビジネスも

 ハローキティで知られるサンリオ、その子会社のサンリオウェーブ(本社:東京都)は近年、上海資本のパートナーとともに新たな事業領域に乗り出した。中国でハローキティのキャラクターを使ったゲームアプリの開発を行うというのである。

 ゲームアプリに登場するハローキティはパンダの着ぐるみを着用した設定だ。そのデザインを中国のパートナー企業が担当する。

 ところが、でき上がったデザイン画のハローキティにはなぜか“長い爪”まで描写されていた。サンリオウェーブはすかさずこれに「待った」をかけた。

次のページ