上司の仕事の本分は、上下関係よりも自分のチームに最大限のアウトプットを出させることなので、「How can I help you?(なんか手助けできないか?)」「Any problem?(何か問題あるか?)」と、上司のほうから積極的に気にかけて問題点を聞き出し、部下がより働きやすい環境でアウトプットを出しやすいよう、サポートしているのだ。このような環境下であるからこそ、ガチンコ本音で発言しやすくなり、新しい価値観を生み出しプロジェクトを進めることができる。

 もちろん、反対意見も歓迎される。これは、ディベートテクニックとして相手に反対意見をぶつける「悪魔の代弁者(Devil's Advocate)」という手法を使い慣れていることもある。しかし、日本社会では理論的にディベートテクニックを使うことさえも、「異なる意見=相手の思想を否定=相手が嫌い」と捉えられてしまい、ケンカした小学生のように仲が悪くなってしまう場合もある。

 シャープが台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業の下で再建が決まり、東芝の白物家電事業が中国家電大手・美的集団に売却が決まったことを受け、メディアは「白物家電 アジア系企業に屈す」と報じていた。

 日本人の筆者からしても悔しいことだが、日本の「仕事後進国」の改善にこそ着手していかないと、シャープや東芝のようなケースがこれから続いていく懸念を拭い切れない。日本企業がイノベーションを生み出せない一番の大きな弊害は、意見やアイディアが磨かれない環境だ。マイナス評価や意見をすると嫌われてしまう環境では、多くのアイディアの種は埋もれていることだろう。読者諸氏も何度となく、言葉を飲み込んできたはずだ。

 日本の従来型である「1人の絶対的なリーダーがいて全責任を取る」環境にも、問題アリだろう。あらゆる異なる意見を受け入れる環境では、メンバー全員がリーダーシップを発揮する「メンバーのリーダーシップの総和で業務を推進する協業」こそが、新しい価値観を生む。結果として、業務を効率的に効果的に時間短縮し、推進し、インパクトとイノベーションを生み出してゆく。

 とにかく日本にとっては、意見やアイディアの芽を発言しやすい環境へとスイッチを切り替えるための模索が急務であろう。

●個々人が職人芸で働くのではなくチーム・組織で効率化を図れ

 日本では、なんでもできて、誰よりも長く一所懸命に仕事する人が偉いと思われることが多い。かつて筆者も、日本からシンガポールに渡ったばかりのころ、なんでも1人でこなせるスーパービジネスマンを目指し、1人で仕事を抱えて、こっそりサービス残業の日々を過ごしていた時期がある。

 その経緯は、連載第5回「日本の「残業代ゼロ論争」にモノ申す!(上)」などで詳細を何度か書いたので割愛するが、当時の筆者の「自分でなんでもするスーパービジネスマン」思想が、海外では「仕事ができない思想」になってしまったことがある。

 つまり海外では、他の人を信じて仕事を任せられない人は、「逆に信頼されていない人」と評価される。信頼しないのであれば、結局は誰からも信頼されなくなってしまう。

 信用が低いとマネジメント職としては致命傷だ。1人で仕事を抱え、残業三昧を強いられ、「チームはコントロールできず、1人分の仕事しかできない人」と最終的には低い評価を受けてしまうのだ。

 経済大国とはいえ、成熟国として色々な社会問題が顕在化し始めた日本。グローバル化が加速し、国内外で外国人とのコラボが必要となる今だからこそ、日本は個々人が考え方を変え、仕事の仕組み、業務の進め方を変える必要があるのだ。業務内で効率よく仕事を進めるために、今こそ仕事の進め方に関しての考え方を、抜本的に変えてみてはいかがだろうか。

 ・日本はスピードが致命的にトロい
 ・時間は限られている。圧縮化が必要
 ・自分でやったほうが早い!は損している
 ・部下をヒーローにするためのマネジメントをする

 仕事をうまく任せることで、周りの人間が仕事ができるようになる。そうすると、自分は別の仕事をすることができる。このサイクルで、仕事は効率良く回り、プライベートとのバランスも取れるのだ。

●「パッシング」から「ラッシング」へ 世界が憧れる「仕事先進国」を目指せ

「Japan Passing」(日本は無視・素通り)と言われて久しい、閉塞感漂う日本を助けてくれるのは、私たち日本人以外いない。私たち一人ひとりが変革していかねばならないのだ。私たち一人ひとりが変わり、元気になり、日本が元気に繁栄のイノベーションを生み出すことができれば、「Japan Rushing」(ジャパンラッシング、日本へ殺到)と言われるようになり、日本は改めて世界から注目されるはずだ。

 日本から閉塞感が1日も早く払拭され、日本がアジア・世界のリーダーとして世界の発展と平和に貢献し、今まで以上に世界から敬愛され、日本人であることを誇りに思い、仕事やプライベートを楽しめる国となることを、心から願っている。

 STAY GOLD!!

(編集協力/天田幸宏)