最新の科学研究によれば、これまで定説とされてきた勉強法は多くの場合に間違っているという。では、どうすれば脳はもっとも効率よく学べるのか。米国ベストセラー『脳が認める勉強法』より、学習効果を高めるテクニックの一部を紹介する。

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Q1:勉強のルールを設ける必要はあるか? たとえば、勉強する場所は決めたほうがいいのか?

A:決める必要はない。ほとんどの人は、場所を変えて勉強するほうが成績が上がる。いろいろな環境で勉強するほど、勉強したことの記憶が鮮明になり、また長く記憶に残る。それに、場所を変えることで、「ここで勉強しないとはかどらない」という場所が生まれにくくなる。

 要するに、ノートパソコンを持って庭に出る、カフェへ行く、飛行機に乗るなどして場所を変えて勉強するほうが、環境に左右されずに勉強した内容を思いだしやすくなるのだ。突き詰めれば、勉強は、どんな条件下でも実力を出せるようになるために行うものだ。

 場所を変えることだけが、いわゆる「背景情報の影響」の恩恵にあずかる方法ではない。勉強する時間帯を変えることはもちろん、黙って教科書を読むときもあれば誰かと議論するときもある、コンピュータに入力するときもあれば手書きのときもある、鏡の前で練習するときもあれば音楽を聴きながら勉強するときもあるというように、勉強の仕方を変えることにも効果がある。

 いま例にあげたことは、それぞれが異なる学習環境だと言える。同じ内容を勉強しても学習環境が異なれば、記憶される方法も変わる。

Q2:睡眠は学習にどのような影響があるのか?

A:睡眠には複数の段階があり、段階ごとにそれぞれのやり方で、記憶された情報の強化や選別が行われる。

 たとえば、睡眠の前半に起こる「深い眠り」は、名称、日付、公式、概念といった事実を記憶にとどめるために重要な役割を果たすことがわかっている。情報をたくさん暗記しないといけないテスト(外国語の単語、人名や名称、出来事の日付、化学構造などを問うテスト)が控えている場合は、普段どおりの時間に就寝して「深い眠り」を十分にとり、翌朝早く起きて簡単に復習するとよい。

 ただし、運動能力や創造的思考(数学、科学、作文など)の強化に役立つ眠りの段階は、目覚める前の朝の時間帯に訪れる。音楽の発表会やスポーツの競技会、あるいは創造的思考を必要とするテストの準備をする場合は、普段よりも遅くまで起きて準備するほうがいいだろう。

 こうしたことを知っておけば、勉強や練習をしたいと思ったときに、朝と晩のどちらを使えば効率がいいかがわかる。

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