驚異的ともいえる進化を遂げた日本代表は、プライドをかけて勝ちにきたアメリカも破った。3勝1敗。ボーナスポイントの差でティア1の強豪・南アフリカとスコットランドに及ばず決勝トーナメント進出は果たせなかったが、日本では凱旋として迎えていいだろう。

●2019年のW杯日本開催に向け国内リーグにも目を向けたい

 選手たちは、ほんの少し激戦の疲れを癒した後、各々所属チームに戻り、トップリーグや大学リーグで戦うことになる。日本中を感動させた選手がいるチームの試合は多くの観客で埋まるはずだ。

 今や世界的な人気選手となったフルバックの五郎丸歩はヤマハ発動機、キャプテンとして獅子奮迅の活躍をしたフランカーのリーチ・マイケル、37歳という年齢を感じさせない頑張りを見せたロック・大野均は東芝、的確な判断力でチームを引っ張ったスクラムハーフ・田中史朗、BK顔負けのスキルを披露したフッカー・堀江翔太、トリッキーな動きでトライを取った山田章仁はパナソニック、驚異的な突破力を見せたナンバー8のアマナキ・レレイ・マフィはNTTコミュニケーションズ、スピードあふれるプレーで魅せたウイング・松島幸太郎、地味ながらいい働きをしたスタンドオフ小野晃征はサントリー、南アフリカ戦で劇的な逆転トライを決めたウイングのカーン・ヘスケスはトップリーグの下のトップキュウシュウAの宗像サニックス…。

 彼らが日本でどのようなプレーを見せてくれるか楽しみだし、その存在によってチームも活性化しレベルアップするに違いない。

 また、W杯で勝ち残っている強豪チームにも大会後、日本のトップリーグでプレーする選手がいる。オーストラリアのフルバック、イズラエル・フォラウ、南アフリカのスタンドオフ、ハンドレ・ポラードとロック、エベン・エツベスはNTTドコモ、南アフリカのスクラムハーフ、フーリー・デュプレアはサントリーでプレーする。南アフリカとオーストラリアは優勝する可能性があり、世界一の称号を得た選手のプレーが日本で見られるかもしれないのだ。その意味でも南アフリカとオーストラリアの試合は要注目である。

 そして重要なのは、現在のラグビー人気の盛り上がりを一過性のブームに終わらせないことだ。今大会を見て改めて感じたのは開催国イングランドの人たちのラグビーに対する深い愛着である。まず日本代表が南アフリカを破った時の反応。それがどれだけすごいことか、ひとりひとりが分かっているから、日本の健闘を称え狂喜乱舞してくれた。むしろ日本国内より熱狂度は高かっただろう。また、早々に1次リーグ敗退が決まった国同士の対戦、たとえばプールCのジョージアvsナミビア戦、プールAのフィジーvsウルグアイ戦という地味なカードでもスタジアムは超満員だった。

 次回、2019年のW杯は日本で開催される。今回、日本代表が3勝1敗の好成績を収め、次回の開催国としての面目は立ったが、世界のラグビーファンがテレビ観戦する以上、対戦カードによってスタジアムがガラガラというのはみっともない。ラグビーの試合なら、どこが対戦しても観に行きたい、というところまでラグビー人気を根づかせたいものだ。

 ラグビー界は日本が盛り上がっているこの絶好機を逃してはならない。