―― 一般的な健康診断ではレントゲンによる画像検査が行われていますが。

 レントゲンの画像検査は、画像を読み解くのが難しく、早期がんを見落とすケースも少なくありません。確実に早期発見を目指すならば、胃カメラ検査を行ったほうがよいと考えています。胃カメラ検査に加えて、転移を調べるCT検査を行えば、胃がんの治療方針はほぼ決定します。

●早期がんは“治るがん” 進行がんは年齢を考慮した治療を

――検査で胃がんが見つかった場合、どのような治療が行われるのでしょうか。

 胃がんは、早期がんと進行がんの2つに分けられ、検査で発見される割合は半々です。この判断には、がんの大きさではなく、深さが関わってきます。早期がんは、発生したがんが胃の粘膜に限局している状態。一方、進行がんは粘膜より深い筋層に達したものをいいます。その中でもさらに胃の表面までがんが浸潤した場合には、転移の可能性が高くなります。

 早期がんの場合は、粘膜にあるがんを切除することで、治癒させることができます。つまり、早期がんは“治るがん”なのです。治療法としては、腹腔鏡もしくは開腹での手術を行いますが、ごく浅く、小さい早期がんであれば、内視鏡で切除することもできます。入院期間は、内視鏡手術で1週間程度、腹腔鏡や開腹手術では10日から2週間程度が目安になります。

 進行がんが発見された場合は、進行具合と転移の状況によって、手術で切除できるのか、抗がん剤を使ったほうがよいのか、あるいは緩和ケアを選ぶべきかを検討することになります。胃がんは、リンパ節、肝臓、腹膜に転移しやすく、以前は治療が難しいとされていました。しかし、最近では、リンパ節と肝臓については少数の転移であれば切除して治療できるようになりました。

 ただし、進行がんの治療成績は50~60%であり、患者の健康状態や年齢も考慮して治療方針を決めることが大切です。例えば、抗がん剤治療でも、ある程度の体力が必要となるため、高齢者にはマイナス効果しか生まないこともあります。どのような治療でも、治療による負担と、治療によるプラスの効果を勘案して、どうするか決定すべきです。

――胃がんを予防するためには何をしたらよいのですか。

 タバコを吸っている人は、禁煙することが第一です。禁煙するだけで、胃がんのリスクを大幅に下げることができます。食生活では、塩分の摂取を控えるようにして、野菜を多くとる食事を心がけるようにしましょう。また、運動をすることもがん予防に効果的です。そして、「ABC検診」を受け、リスクの高い人は、医師と相談しながら定期的に胃カメラ検査をすることが早期発見につながります。

 もし、検診でピロリ菌がいることがわかったら、除菌治療を受けることをおすすめします。ピロリ菌の除菌によって、胃がんの発生を2分の1から3分の2に抑えることが可能です。今後「ABC検診」が浸透し、胃カメラ検査とピロリ菌除去が定着すれば、20年後には胃がんの患者は激減している可能性もあると思います。また、衛生状態の改善から、実際比較的若い年代の方の、ピロリ菌感染は減少しています。