中田英寿 つなぐ 福岡、GALA その2

中田英寿 つなぐ 福岡、GALA その2

KATAGAMI -BOX
(C)Junichi Takahashi
 前回紹介した7月19日の「REVALUE NIPPON PROJECT CHARITY GALA 2014 with GUCCI」で発表されたREVALUE NIPPON PROJECTの5作品について簡単に紹介したい。

 ひとつ目は、僕が型紙に興味を持つきっかけとなった「KATAGAMI Style」展を開いた三菱一号館美術館の高橋明也館長が中心となり、デザイナーの北川一成さん、写真家の新津保建秀さん、型紙職人の六谷博臣さんがそれぞれの知恵と技術を結集した「KATAGAMI -BOX」。アクリル製の大きな箱に入っているのは、型紙そのものや実際に長年使ってきた道具、型紙を作る様子を撮影した写真など。「伊勢型紙の記憶を封じ込めた」(高橋館長)コンセプチュアルな作品だ。あえて型紙を美化することも、卑下することもなく、ありのままの姿を閉じ込めるタイムカプセルのような作品だ。

 ふたつ目は、プロダクトデザイナーの喜多俊之さんとウェブデザイナーの中村勇吾さん、デザインディレクターの須藤玲子さん、そして型紙職人の内田勲さんが組んだチームが作ったコート「ぬのもあれ」。このコートは、約3センチの幅に16〜17本を正確に彫りぬいた縞彫りの型紙を重ねあわせて染めることで、意図的に視覚現象“モアレ”を発生させる染布を作り、それをコートに仕立てた不思議な作品。これをすべて人間の手で行っているというのは驚異的だ。透け感のあるコートは、まるで“天女の羽衣”のような不思議な印象だった。

 3番目に紹介したいのは、東京都現代美術館のチーフキュレーター長谷川祐子さんと、建築家の妹島和世さん、型紙職人の兼子吉生さんのチームが作った型紙をそのまま素材として使用した球体「silver balloon」。内側から発光するため、型紙が美しい影を作る。兼子さんは、古くから伝わる九つの柄をこの球体のために新たに彫ったそうで、竹の枠組みや銀を拭き付けた雲母染めまですべてがハンドメイド。アーティスティックでありながら、どこかぬくもりを感じさせる型紙の特性が生かされた作品だ。

 四つ目は、古美術などを取り扱う月刊誌「目の眼」編集長の白洲信哉さんとインダストリアルデザイナーの新立明夫さん、そしてオコシ型紙商店(型紙問屋)の起正明さんによる「動く型紙」、自転車「風雲波輪」だ。最新の技術を用いた自転車のフレームやサドルなどに型紙そのものや型紙による染めを採用。モダンとクラシック、また英国と日本の伝統がミックスした斬新なアイデアに驚いた。

 そして最後は、僕とプロダクトデザイナーの深澤直人さん、型紙職人の木村正明さんがチームを組んで作った「甲州印伝の箱」だ。実は深澤さんは僕と同じ山梨県の出身で、以前から一緒に何かやりたいと思っていたのだが、今回このプロジェクトの相談をしたところ、ぜひやろうと引き受けていただいた。甲州印伝は、ふたりの地元である山梨の伝統工芸で、鹿革に漆で紋様を入れたものだ。通常、財布や小物入れなどサイズの小さいものが多いが、今回はインテリアとして使えるような四つ組の箱を製作した。

 深澤さんが描いたアザミの絵を木村さんが型紙におこし、それを甲州印伝の老舗「印傳屋 上原勇七」が鹿革に染め、さらに木製家具の名工として知られる香川県の「桜製作所」が作った箱に張る。深澤さんが指定したパステル調の色は従来の印伝にはなく、染めることが難しい色。ほんの少しの型紙のズレも、革のキズも、箱の歪みも許されない繊細な作業の積み重ねで出来上がった逸品だ。製作に関わった誰もが「もう二度と作れない」というほどのこだわりが詰まっている。

 会場には、これらの作品に加え、芹沢銈介さんの作品もお借りして展示することができた。会場を訪れた人たちは、これまで型紙に接したことがない人がほとんどだろう。それぞれの作品の素晴らしい可能性を感じ、型紙が見直されるきっかけのひとつになればいいと思っている。毎回思うのだが、これだけの作品を限られた人しか目にすることができないのは、本当に惜しいと思う。できれば、美術館やギャラリーで多くの人に見てもらえるようにしたい。これは、今後の課題でもある。

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