中田英寿 つなぐ 福岡、GALA その1

中田英寿 つなぐ 福岡、GALA その1

芹沢銈介氏の素晴らしい作品①
(C)Junichi Takahashi
 7月19日に福岡で「REVALUE NIPPON PROJECT CHARITY GALA 2014 with GUCCI」を開催した。僕が旅の中で出合った伝統工芸の素晴らしさをもっとたくさんの人に伝えたいという思いでスタートしたこのガラも今回で5回目。

 これまで、東京、京都、大阪、横浜で開催してきたが、今回もリピーターの方や地元•福岡の方、またこれまでの活動に興味を持ってくださって初めて参加された方など約300人が集まり、盛況となった。

 ガラのメインとなるのは、伝統工芸の作家と現代のアーティスト、建築家、デザイナーなどのクリエイターがコラボレーションするREVALUE NIPPON PROJECTの作品の発表とオークションだ。過去には、陶芸、和紙、竹というテーマで素晴らしい作品が数多く誕生し、オークションを盛り上げてきた。次は何にしようと、いろいろ悩んだ結果、僕が今回のテーマに選んだのは、「型紙」だ。型紙は、その名の通り、和服などを染めるときに使われる柄を彫り込んだ紙。和紙を柿渋で張り合わせたものを彫刻刀のような小刀で彫る、伝統工芸には欠かすことのできない道具だ。

 僕が初めてこの型紙の存在を知ったのがいつだったかは、はっきり覚えていない。恐らく友禅や小紋などの染色家の方のところを訪ねたときだったのではないかと思う。ただ和服や和小物を見たとき、たまに驚くほどに現代的なデザインの柄に出合うことがあったのだが、今にして思えば、それも型紙が作った模様、パターンだったのだろう。

 型紙への興味が大きくなったきっかけは、2年前に東京の三菱一号館美術館で行われた「KATAGAMI Style — 世界が恋した日本のデザイン」展を見たことだった。この展覧会は、本来道具である型紙をアートとしてとらえた画期的なもの。さまざまな魅力的な型紙を紹介するだけでなく、1800年以降にヨーロッパで巻き起こった芸術運動「ジャポニズム」において型紙が果たした役割なども知ることができ、僕のなかの型紙“熱”が一気に高まることとなった。

 また同じような時期に人間国宝であり染色家の、芹沢銈介(1895−1984)の存在を知ったことも大きい。国内外で高い評価を受けた彼の作品は、モダンでスタイリッシュで、和を感じさせつつもどこか無国籍な雰囲気。デザインはもちろん色遣いも美しく、着物やのれんからカレンダー、絵本、陶器など幅広い作品が残っている。彼の美術館は、宮城県と静岡県にあるが、僕はその両方を訪ねて、その魅力にすっかりはまってしまった。

 問題は、この型紙が現在、他の伝統工芸と同じか、それ以上に後継者不足が深刻で、もはや存亡の危機にあるといっても過言ではない状態にあるということだ。和服離れが需要の低下を招いたのはもちろん、なにしろ技術の習得が困難で10年、20年修業をしても“駆け出し”と呼ばれる世界。国内随一の型紙の名産地である伊勢でも、かつて700人以上いた型紙職人が現在、伝統工芸士として活動しているのは二十数人を残すのみ。しかも平均年齢が70歳以上と、前途はかなり厳しい。

 もし型紙がなくなるようなことがあれば、京友禅や江戸小紋などの染色はかなり大打撃を受け、さまざまな伝統工芸に影響がある。このREVALUE NIPPON PROJECTが少しでも型紙に興味を持つきっかけを作ることができて、その存続に役に立つことができれば……そんな思いも心のどこかにあった。

 こういった要因が重なって、今回のテーマは型紙になったのだが、型紙自体が作品ではないということもあり、メンバーたちは何を作ればいいのか、かなり頭を悩ませたと聞いていた。型紙は道具である以上、その用途は幅広い。どんな素材でも染めることはできるし、かつ型紙自体の芸術性も高い。前回の竹のように、ある程度、使い道や加工の幅が限定されていると、そこからアイデアを発展させていくことができるが、型紙のように無限大に可能性のあるものは、逆にひとつのアイデアに収束させるのが難しい。

 しかし会場であるホテルに足を運び、5チームすべての作品を見たとき、「さすが!」と思わざるを得なかった。どのチームも型紙の特性を理解し、それを最大限に引き出した上で、新しい可能性を追求している。REVALUE NIPPON PROJECTを続けてきたが、毎年この瞬間がとても楽しみだ。

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