中田英寿 つなぐ 東京、日本伝統工芸展

中田英寿 つなぐ 東京、日本伝統工芸展

伝統工芸展会場
 毎年秋になると、日本橋三越本店で開催される工芸展に足を運ぶ。今年で第60回を迎える「日本伝統工芸展」だ。工芸の世界では、国内最大規模の公募展で、陶芸、漆芸、金工、染織、木竹工など多くの分野の工芸作品が展示されている。

 1950年に文化財保護法が制定されたのをきっかけに、4年後から始まったこの工芸展は、工芸界最大のイベント。今年は1853点の出品から選ばれた616点を展示。出品者も全国津々浦々の若手から人間国宝までさまざまだ。作品数が多く会場も広いので、全部見ようと思うと駆け足で回っても2時間近くかかるのだが、まったく飽きることがない。

 会場には、僕が旅の中で出会ったり、REVALUE NIPPON PROJECTに協力してもらったりした工芸作家の作品も数多く展示されている。展覧会初日には、作家本人も数多く会場に来ていて、会場に着いた瞬間から、「お久しぶりです」とあちらこちらから声がかかり、知り合いの工芸家の方から別の方を紹介されたりして、これまでの輪が一層広がるのも、この工芸展の楽しみのひとつ。

 既に訪れ、その後なかなか会う機会のない地方の工芸家の方とは、1年に1回顔をあわせると古い友人に会ったような気分になる。まるで旅の復習をしているかのようだ。なかには、僕が出会ったあとに人間国宝になった作家の方もいて、そういう朗報に触れると自分のことのように嬉しくなる。

 もちろん僕が会ったことのない工芸家の作品や、見たこともないような手法の作品も多い。だから、これから先の旅の訪問先をここでチェックすることもある。そのような新しい発見ができることもまた、この工芸展の魅力だ。

 美術館などの展示と違い、作品との距離も近く身近に感じることができる。作家自身が来ていることもあるので、直接話を聞けるのもいい。会場の一部では作品を購入することもできる。東京以外に地方の三越などでも開催されるので、たくさんの人が素晴らしい工芸に触れることができる。

 ただひとつ残念なのは、こんなに素晴らしい工芸展なのに、若いお客さんの来場が少ないということ。最近では若い作家も多くなってきているし、客層もより幅が広くなるといいなと思う。「伝統工芸」という言葉がハードルを高くしているのかもしれない。「手作り」や「職人技」だったらどうだろう? 最近、僕自身もいろいろな「日本のもの作り」をテーマにしたお店や展覧会に行くが、そこには多くの若い方々も来ている。伝統工芸展も、実際にはモダンなデザインの作品も多いし、生活の中で使ってみたくなるものも多い。ぜひ多くの人にこの「日本伝統工芸展」を見てもらいたいと心から思う。

続きを読む

この記事にコメントをする

TwitterでAERA dot.をフォロー

@dot_asahi_pubさんをフォロー

FacebookでAERA dot.の記事をチェック