第15回 2冊目の著書「日本の地域構造」――東京一極集中に反対 (1/2) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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第15回 2冊目の著書「日本の地域構造」――東京一極集中に反対

文・堺屋太一

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 1963年9月に企業局(現産業政策局)工業用水課に配置換えになった私は、ここで2冊目の著書を書いた。「日本の地域構造」(東洋経済新報社)である。

 ここでは東京一極集中政策を批判、東京と大阪を二つの焦点とする「楕円(だ・えん)構造」論を展開した。

 この書物は学界では高く評価され、東京大学図書館の推選本にも入ったが、官僚社会では完全に反主流。

 私の「水平分業論」に続く二つ目の生涯テーマは地域構造論である。万国博覧会の大阪開催や首都機能の首都圏以外への移転などは、このテーマから生じたものだった。

■東京一極集中の真因

 2014年9月3日の内閣改造で、安倍内閣は地域創生担当大臣を創設、東京一極集中の防止と地方の振興に取り組むことを明確にした。大変いいことであり私は大賛成だ。

 これまでも、地方振興を掲げた政治家は多かった。代表例は「ふるさと創生」を打ち出した竹下登内閣だ。しかし、これも総理大臣の熱意にもかかわらず、マスコミ論調の反発を受けて潰された。戦後官僚が仕組んだ東京一極集中の思想と仕組みは抜き難く強く浸透しているのである。それに東京一極に集中したマスコミが同調、あたかも東京一極集中が経済文化の発展に応じて生じる自然の流れかのように思わせている。

 世界の主要国では、1980年代から最大都市への人口や企業の集中度合いは低下している。ニューヨーク、ロンドン、パリ、みなそうだ。そんな中で、日本だけは今も人口、産業、文化、国富の東京集中が続いている。官僚たちがそんな仕組みを作り上げたからである。

 戦後の国土政策の大方針を示したものともいうべき「全国総合開発計画(全総)」(1962年)は、「工業先導性の理論」に基づいている。

「自律的に立地を選べるのは製造業の大型工場群(コンビナート)」だけである。流通業やサービス業、医療、文化活動などは地域住民の需要に応じて生じる従属産業である。地域の振興発展のためには、まず大型工場群を誘致して人口を増やさねばならない。地域の人口が増えれば商業も文化活動もそれに応じて増えるというのである。

 全総とそれに続く新全総、三全総はこの理論に基づき、全国各地に工業用地を造り、港湾や道路を作り、工業用水道を敷いた。そのために費やした費用は現在価格なら何百兆円にものぼるだろう。

■大間違い「工業先導性の理論」

 戦後の国土政策の基になった「工業先導性の理論」は、理論的にも間違っているし、歴史的事実にも反している。日本でも外国でも大都市のほとんどは政治権力(城下町)や宗教団体(門前町)を基として育った。大阪や新潟は商業集積から生まれた。工場から生まれた八幡や釜石などもあるにはあるが、数は少なくて規模も小さい。頭脳明晰なはずの官僚たちがなぜこんな間違いをしていたのか。それは「国家の頭脳活動は官僚の集中する首都東京に集めた方が自分たちの都合がいい」という自己都合があったからである。

「全国的頭脳機能は東京でする。地方的なものは各地方中核都市でやる。府県単位のものは県庁所在地で行う」??これが戦後官僚の暗黙の合意である。この発想に基づけば、全国的な頭脳機能は地方にあってはならず、地方での文化・情報活動は抑制せざるを得ない。

■「頭は東京、地方は手足」

 全国的頭脳機能とは何か。


(更新 2014/10/28 )


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プロフィール

堺屋太一(さかいや・たいち)

 1935年生まれ。本名は池口小太郎。60年に通商産業省に入省し、大阪万博をプロデュース。退官後は作家・経済評論家として活躍。経済企画庁長官を務め、現在は内閣官房参与。主な著書に『団塊の世代』(文春文庫)、『平成三十年』(朝日文庫)など

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