著者 坂本廣子(さかもと・ひろこ)食育・料理研究家。40年にわたり幼児期からの体感食育キッズキッチンを実践し、日本の食育の先駆け。NHK 教育テレビ『ひとりでできるもん!』の生みの親でもある。社会問題を台所からの発想で提案、解決を目指す社会派料理研究家として、防災、介護、教育、村おこしにも携わる。家庭科の教科書『わたしたちの家庭科小学校5・6』(開隆堂)の著作者の一人。『坂本廣子の台所育児』『もっとひろがる国産米粉クッキング』(共に農山漁村文化協会)など著書、公職多数
著者 坂本廣子(さかもと・ひろこ)
食育・料理研究家。40年にわたり幼児期からの体感食育キッズキッチンを実践し、日本の食育の先駆け。NHK 教育テレビ『ひとりでできるもん!』の生みの親でもある。社会問題を台所からの発想で提案、解決を目指す社会派料理研究家として、防災、介護、教育、村おこしにも携わる。家庭科の教科書『わたしたちの家庭科小学校5・6』(開隆堂)の著作者の一人。『坂本廣子の台所育児』『もっとひろがる国産米粉クッキング』(共に農山漁村文化協会)など著書、公職多数
『坂本廣子のつくろう! 食べよう! 行事食 (1)正月から桃の節句』(少年写真新聞社)監修 奥村彪生(おくむら・あやお)伝承料理研究家。奥村彪生料理スタジオ『道楽亭』主宰。奈良、飛鳥時代から現代までのさまざまな料理を復元。世界の伝統料理にも詳しい。現在、大阪市立大学大学院非常勤講師。2009年に美作大学大学院で学術博士の博士号を取得。2010年、研究をまとめた著書『日本めん食文化の一三○○年』で第1回 辻静雄食文化賞を受賞。絵本『おもしろふしぎ日本の伝統食材』既刊10巻、絵本『おくむらあやお ふるさとの伝承料理』全13巻(全て農山漁村文化協会)など多数
『坂本廣子のつくろう! 食べよう! 行事食 (1)正月から桃の節句』(少年写真新聞社)
監修 奥村彪生(おくむら・あやお)
伝承料理研究家。奥村彪生料理スタジオ『道楽亭』主宰。奈良、飛鳥時代から現代までのさまざまな料理を復元。世界の伝統料理にも詳しい。現在、大阪市立大学大学院非常勤講師。2009年に美作大学大学院で学術博士の博士号を取得。2010年、研究をまとめた著書『日本めん食文化の一三○○年』で第1回 辻静雄食文化賞を受賞。絵本『おもしろふしぎ日本の伝統食材』既刊10巻、絵本『おくむらあやお ふるさとの伝承料理』全13巻(全て農山漁村文化協会)など多数

 子どもに伝える! 未来に伝える! 行事食『坂本廣子のつくろう! 食べよう! 行事食(1)正月から桃の節句』(少年写真新聞社)が発行以来、多くの小学生と保護者から人気を集めている。

 この本では、正月から節分、バレンタインデー、3月の桃の節句までの季節の行事を取り上げ、食との結び付きや行事食の料理法を紹介する。おせち料理や雑煮、七草がゆ、チョコレート、ちらしずしなどのレシピを写真で見せ、目安の時間と共に一目でわかりやすい構成になっている。行事の由来も、美しい写真やかわいらしいイラストを豊富に用いて説明し、行事食をつくりながら日本の伝統行事や文化についても楽しく学べる。

 「『和食』がユネスコの無形文化遺産に登録され、伝統的な行事と結び付いている日本の食文化が注目されています。でも、実際に家庭でどれほど食べられているのでしょうか。基本になる部分の軸が多少ぶれたような創作和食も結構ですが、伝統的な原形を子どもたちに見せて行事食も伝えたい、そして食べごとの知恵を受け継いでいってほしい。そんな思いでこの本をつくりました」という食育・料理研究家で著者の坂本廣子さんに話を聞いた。

■知識学習と体験的伝承

 坂本さんは、料理の専門の勉強をしたわけではなく、大学は英文科の出身で、料理学校に通ったこともない。当初はこの道に進むことなど考えていなかったが、子どもたちにきちんとした料理を知ってもらいたいという気持ちで、それを伝えていく仕事を始めたのだという。

 食文化は、つくり方が伝わらなければ残らない。昔からの知恵がこのようにあるということを伝えながら、なるほどと納得して実際につくることが大事なのだ。食育に関してはいろいろな形でいわれているが、栄養素などの知識学習は学校で学べる。その一方で、見よう見まねで行う体験的伝承というものもある。頭でわかっているだけではなく、実際につくれることを伝えていきたいと坂本さんは思っている。知識学習と体験的伝承を合わせたもの、そのツールの一つがこの本なのだ。

■日本の食べ事ごとを受け継ぐ

 子どもたちを集めた坂本さんの料理教室は18年になるが、子どもが喜ぶための味付けをするのではなく、それぞれの食材自体が一番おいしく食べられる料理方法を教えている。なぜそうするのか、その必然性を子どもが理解できるように説明をする。子どもだからという妥協はなく、逆に、子どもだましは子どもに対して失礼だという考えである。力の弱い子どもでも自分でできる数々のレシピから、体験を通して多くの発見をしていき、自分がつくったという達成感も味わえる。「科学みたいでおもしろい」といわれることがあるというが、料理は食材で実験をするようなサイエンス感覚の部分もあるのだ。それらは子どもだけでなく、実は大人にも共通している。

 でき上がったときの自信、売られているものと同じようにつくれた発見と喜び。親の助言があったとしても、下ごしらえの仕方や料理方法などは、この本のレシピ通りにつくると自然にできるようになっているという。自分が食べるものを自分で料理してみることは、食文化を自分自身で表現することでもある。これが、本当の意味での継承につながっていくのだ。

 地域や家庭により形式が変わってきたとしても、その行事に向き合う気持ちは皆同じであろう。自然への感謝とともに食で表す。普段とは異なる特別な日の食事をつくれるようになるのは、日本の食べごとを受け継ぐことでもある。行事食をつくって、豊かな日本の食も味わっていきたい。(朝日新聞デジタル &M編集部 加賀見 徹)

『sesame』2016年1月号(2015年12月7日発売)より
http://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=17608