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第38回 「どうでもいいもの」の重要性

文・鈴木正晴

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 前回ご紹介したように、のらぴかを作ったのは、「ロボット工房のらとりえ」のサカガミさんです。現役のロボットエンジニアで、小学校の卒業文集に、将来F-1ドライバーではなくて、F-1のメカニックになりたいと書いた男。今の夢は、「心を持ったロボット、一生をともに過ごせるパートナーロボットを作りたい!」だそうです。

 男ならわかる、この気持ち。こういう純粋な気持ちをいつまでも持っていきたいですね。海賊王に、俺はなる!みたいな。

 100円ショップがたくさんできていることでもわかるように、機能面が重視され、用事を済ますだけになるべく安いものを手に入れたい、という気持ちも、僕は生活者として共感できますし、実際100円ショップにもお世話になっています。

 その反面、どうせ同じことをするなら、ちょっとでも楽しくやってみたいという気持ちもあります。一手間かかってでも手作りのものを手に取り、生活に取り入れるというのは、そんな潜在的な気持ちの表れなのではないでしょうか。日本製のものも、海外製のものも、100円ショップのものも、それぞれの良さを生活の中に生かして、一つ一つ思いをもって選択していく。そんな生活を送りたい。

 スマホゲームをするのではなく、「のらぴか紋-mon-」で、4つのボタンをカチカチ鳴らしてシューティングゲームをする。上司に怒られて寂しいとき、「のらぴか律-ritu-」の鍵盤に繊細に指先をあててアナログな音色に心を和ませる。

 サカガミさんの夢、「心を持ったロボット」には至らないかもしれませんが、のらぴかをポケットに忍ばせるだけで、毎日がちょっとだけ楽しくなるコト請け合いです。まさに「パートナーロボット」です。

 モノヅクリに情熱をかける人は変わった人が多く、とっつきにくいところもありますが、我々の心を豊かにしてくれる芸術家でもあります。これからもたくさんのモノヅクリ人(ビト)に出会っていきたいと思っています。


(更新 2016/4/20 )


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プロフィール

鈴木正晴(すずき・まさはる)

 株式会社日本百貨店・代表取締役社長、ディレクター兼バイヤー。1975年神奈川県生まれ。1997年東京大学教育学部卒業後、伊藤忠商事株式会社に入社。アパレル関連の部門で、海外とのビジネスを多く経験する中で、国内の“モノ づくり”文化に根差したすぐれものをより広いマーケットに広める一助となりたいと考え、2006年3月伊藤忠商事を退社。2006年4月に株式会社コンタン(現・株式会社日本百貨店)を立ち上げる。2010年12月には東京・御徒町に、日本の優れものを集める小売店“日本百貨店”を オープン。食・雑貨・衣料雑貨など、全国から様々なこだわりの商材を集め、作り手と使い手の出 会いの場を提供している。著書に「日本百貨店」(飛鳥新社 2012/12)