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第7回 “桐生”第2弾 松井ニットのマフラー

文・鈴木正晴

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ラッセル編み機

ラッセル編み機

畝(うね)がきれいに出ています

畝(うね)がきれいに出ています

作業をする弟の敏夫さん

作業をする弟の敏夫さん

松井ニットの毛混ストライプリブマフラー

松井ニットの毛混ストライプリブマフラー

 日本百貨店の鈴木正晴です。第3回のコラムでご紹介しました桐生の街。皆様から様々なご連絡をいただきました。中でも“桐生に行ってみたくなって行ってしまった!”という方のメールには感動いたしました! 本当にありがとうございました。

 さてその桐生。もう一つ、どうしても皆様にご紹介したいモノがありました。

 前回ご紹介した「超撥水風呂敷」は、日本の伝統的な織物と柄、そして最先端の技術の組み合わせという、新しいものをどんどん取り入れる日本のモノヅクリの一端を感じさせてくれる商品でした。

 今回ご紹介する「松井ニット」の商品は、「最先端」とは真逆。ロースピード、ローテンションの「伝統的」な編み方で編まれたマフラーです。

 ロースピード、ローテンションとはどんな意味か。

 効率を考え、どんどん機械を進化させ、早く正確なモノを作ることを目指していたのが戦後の日本産業界の大きな流れだとすると、それとは逆に、じっくり時間をかけて、糸に余計な負担・負荷をかけずにふんわりした昔ながらのマフラーを作り続けているのが松井ニットです。

 編み機には、ラッセル編み機という昭和30年代から稼働する年代物を使います。手で糸を張り、その張り具合をおもりで調整しつつ、編み針を動かします。その一つひとつの動きも人間が目で見て、調整を加えていきます。機械が自動的に何かをしてくれるものだとすると、ラッセル編み機はどちらかというと「道具」の延長。出来上がった編地には畝(うね)が出来ていて、いわゆるリブ編みと呼ばれます。この「道具」、最新の編み機に比べるとスピードは10%~20%程度。ですが高速機では絶対に成し得ない、柔らかな仕上がりが実現できます。

 松井ニットの生みの親、松井智司さん、敏夫さんご兄弟は、時代の流れに無理に抗ってこの手法に行きついたわけではなく、自然に良いものを目指した結果、この昔ながらの編み方がベストだと判断したのです。

 手元にある松井ニットを見ていていつも感じるのですが、この伝統を守り良いものを作り続ける姿勢もまた、日本のモノヅクリの一面なのでしょう。手間はかかっても、イイモノはイイ。職人気質と言いますか、そのこだわりが現在にイイモノを伝え続けてくれているのです。


(更新 2015/5/13 )


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プロフィール

鈴木正晴(すずき・まさはる)

 株式会社日本百貨店・代表取締役社長、ディレクター兼バイヤー。1975年神奈川県生まれ。1997年東京大学教育学部卒業後、伊藤忠商事株式会社に入社。アパレル関連の部門で、海外とのビジネスを多く経験する中で、国内の“モノ づくり”文化に根差したすぐれものをより広いマーケットに広める一助となりたいと考え、2006年3月伊藤忠商事を退社。2006年4月に株式会社コンタン(現・株式会社日本百貨店)を立ち上げる。2010年12月には東京・御徒町に、日本の優れものを集める小売店“日本百貨店”を オープン。食・雑貨・衣料雑貨など、全国から様々なこだわりの商材を集め、作り手と使い手の出 会いの場を提供している。著書に「日本百貨店」(飛鳥新社 2012/12)

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