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文・内藤みか

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 最近の男の子は、お金がない。なかなか正社員になれず、アルバイトや派遣社員の場合も多いので、経済的な余裕があまりないらしい。

 彼らは車を持っている子のほうが少ない。私が20代の頃は、男の子は競って車を持ちたがった。中古で手に入れた、扉が少し凹んだ愛車が彼らの城で、ドライブが私達のデートだったのに。

 あれから20年の時が過ぎた今、男の子の一部はどこか遠くに出かけよう、ということさえ難しい状態にある。なぜならば、交通費がかかるから、なのだとか。

 夏が過ぎる頃、ひとりまたひとりと、ひとり暮らしをやめ、東京近郊の実家へ帰る男の子が目につくようになった。バイトのシフトが減らされ、今までは無理すればなんとか払えていた家賃が払えなくなったという。

 先日、私は親しくなった若い男の子に「家に行ってもいい?」と聞かれた。いろんな意味で驚いたけれど、今では誰かの自宅に集まって飲んだり食べたりして過ごすのが流行しているらしい。どこかに出かけたら高いけど、家ならば安くて済むからと言う。
 だから私にも軽く「家に行っていい?」と聞いてきたのだろうけれど、こちらには子どもが2人もいる。まだ恋人でもない若い男の子を連れていったら、仰天するに違いない。

「僕、子ども好きだから平気ですよ」
 と彼は言うけれど、そういう問題ではない。いや、でも子どもたちも珍しいお客さんに喜ぶのだろうか。しかし娘は中学受験だし母親の動向に小さな胸を痛めるようになるのも困る。

「ごめん、やっぱり子どもがいるから無理。あなたのお部屋に行ってもいい?」
 と聞くと、自宅だから無理だという。じゃあどこで遊ぶ? という話になると、
「俺、金ないんで」
 と、途端にしりごみし始めた。そんな、せっかく仲良くなれそうだったのに。

 私の選択肢は3つ。彼を部屋に入れるか、飲食代を私がおごって外で会うか、もう彼と遊ぶのはあきらめるか。
 彼は息子と5つくらいしか年齢が離れていない。部屋に入れたら彼のことを息子扱いしてしまいそうだ。
「それでもいいよ」
 と彼は言うけれど、私がそれではイヤなのだ。だから、もう少し考えてみようと思う。


(更新 2012/10/ 9 )


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プロフィール

内藤みか(ないとう・みか)

 小説家、エッセイスト。山梨県出身。デビュー当時「ケータイ小説の女王」の異名をとリ、現在も電子書籍サイトのダウンロードランキング常連。「年下男恋愛」「イケメン」についてのコンテンツを作り続け、「イケメン評論家」としても活動。近年はイケメン恋愛ゲームのシナリオや、芝居の脚本も手がけるように。『夢をかなえるツイッター』などSNSに関する著作も。近著に『誰も教えてくれない Facebook & Twitter 100のルール』。twitterアカウントは @micanaitoh

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