4000円おごられる。

内藤みか
 先日、20歳の男の子を紹介された。その子は20歳は20歳でも、熟女が好きな20歳なのだという。そして私は20代男子が大好きな熟女なので、会ってみないかということになったのだ。

 私の胸は躍りまくった。こんなレアなカップリングは、なかなかない。お互いのニーズがぴったりと一致しているではないか。まだ見ぬその彼に会う前に少しでも綺麗になっておこうと美容院にも行くほどに私は張り切っていた。

 実際会ってみるとその男子は金髪で、渋谷にいそうなだぶっとしたズボンをはいている可愛い人だった。

 ふたりで居酒屋に入ると、彼はぽつぽつと自分のことを語り始めた。若い子にどうしても興味が持てず、女友達と女友達の母親が並んでいたら、母親のほうにときめいてしまうのだという。

「どうして年上が好きなの?」
「どうして、って......」
 彼は言葉に詰まり、しばらく黙ってしまった。そしてやっと出てきたのは、
「好きだから、好きなんです。理屈じゃないんです」
 という言葉。

 これには妙に納得した。なぜなら私も、何度も「恥ずかしいからもうやめよう」と自分に言い聞かせても、20代男子にばかり目が行ってしまう。そうよね本能って本当に正直よね、と彼に優しくうなずく。私たちはお互いのマニアックさを分かち合えそうだった。

 そしてなんと飲み代合計4000円は、彼が支払ってくれた。こんな若い男性におごられるなんてくすぐったくて、このまま一気にムードは盛り上がるかと思ったのだけど......。

 私たちは居酒屋を出て、公園を少しお散歩して、そして駅であっさりお別れをした。正直に言えば、彼のほうはもっと一緒にいましょうよと誘ってくれたのだけど、私が帰ってきてしまったのだ。

 なんてもったいない! と自分でも思うのだけど、彼に対してどう頑張っても、恋愛感情が湧かず、ときめかなかったのだ。せっかくニーズが一致したのに、本能は一致しなかったことが、たまらなく悔しかった。ああ、この先、熟女好きの若い男子なんて現れないかもしれないのに......。

 こうして私は、またひとりで原稿を書く日々に戻ってきた。私の原稿の中では20代男子が快活に笑っている。私はしばらく私の原稿の中の男子に恋をして、いい物語を書こうと思う。

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