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株券、3円。

文・内藤みか

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 数学少年の息子(高校1年生)は、何が楽しいのか、株式のグラフをよく眺めている。専門用語もよく知っていて、おととしだかお年玉で購入した株が、しばらくしたら倍の価格をつけたこともあった。

 先日、息子が「すごい発見をした!」と騒いで私の部屋に入ってきた。「僕の計 算が間違っていなければ、僕は大金持ちになる!」という。

 彼が示してくれたのは、2円と3円の間を行ったり来たりしている、いわゆる低 位株と言われるものだった。
「株を2円で買って、3円で売ったら1.5倍 になるでしょう? そして再び2円で買って3円で売るんだ。4回売買すれば、僕の2円は10円以上になっているってわけ!」
 つまり2万円で株を買って、4回「2円で買い、3円で売る」を繰り返すとそれ が10万円以上になるということだ。

「ううむ、よく見つけたね!」
 さすがは数学少年! これで我が家は大金持ちになってしまうかもしれない。私たちは勇んでその株に2円で買いを入れてみた。しかし、何日経っても買えなかった。
 どういうことかと調べたら、大量の買い注文が入り、全員の購入希望は叶えられ ない状態だった。息子と同じことを目論む人がすでに大勢いたというわけだ。

 そこへ日本株がぐぐっと上昇しはじめた。もしかしてこの2円株も、上昇するのでは、と私は想像した。この株、たまに4円もつける。ならば3円で買って4円で売ればいいではないか。
 翌日、私は3円の株を10000株 ほど、手に入れた。ふふふ、あとは4円になったら売ればいいだけだ。

「え~っ!? なんで逆 のことしちゃったの?」
 私の話を聞いて、息子はあきれかえった。
「3円で買いたい人なんている? 普通2円で買って3円で売るもんなんじゃない の?」
「そ、そうなの......?」
 確かにネットで調べると、3円で売りたい人も非常に大勢いる。だから私が慌て て株を売りに出しても、何日経っても、一向に売れやしない。

「どうしよう。3円じゃ売れないみたい」
「どうすんだよ。俺、損するのいやだよ! 元に戻してよ!」
 息子に責められながら、今日も私は株を売っている。先日やっと5分の1だけ売れた。たまには私のように3円で買う人太っ腹な人がいるらしい。ああ、早く全部約定し、息子のご機嫌がなおりますよう に......。


(更新 2012/3/22 )


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プロフィール

内藤みか(ないとう・みか)

 小説家、エッセイスト。山梨県出身。デビュー当時「ケータイ小説の女王」の異名をとリ、現在も電子書籍サイトのダウンロードランキング常連。「年下男恋愛」「イケメン」についてのコンテンツを作り続け、「イケメン評論家」としても活動。近年はイケメン恋愛ゲームのシナリオや、芝居の脚本も手がけるように。『夢をかなえるツイッター』などSNSに関する著作も。近著に『誰も教えてくれない Facebook & Twitter 100のルール』。twitterアカウントは @micanaitoh

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