バッグとすれ違い、0円。

内藤みか
 イケメンさんにはブランド物を気前よくプレゼントする私だけれど、自分のものとなるとてんで臆病で、バッグひとつ買うのにもう半年以上迷っている。

 私が欲しいのはCOACHというブランドのバッグ。なぜCOACH?と聞かれてもそれは自分でもよくわからない。デザインや柄が好みだから、としか言えない。前から好きなのに、どうしても勇気が出なくて、フリーマーケットで買った400円のノンブランドバッグをずっと持ち歩いている。

 何万円もするようなものは気軽に買うわけにはいかないのでずっと躊躇していたのだけれど、ある日、ネットをうろうろしていたら、私のハートを鷲掴みにするデザインを見つけた。それはこのブランドではあまり見かけない車輪のような柄で、シルバーの持ち手も未来的だった。

 このバッグが欲しい!

 即座にネットショップの購入ボタンをクリックしてしまいそうになったが、いやいやせっかくだからリアルショップで買おうじゃないかとその晩は思いとどまった。

 翌日、私はイケメンさんと幕張に出かけた。撮影で行ったのだけど、そこには都内にはないCOACHアウトレットショップがあった。「入りたい」とつぶやく私。「寄って行ってもいいですよ」と言う優しいイケメンさん。
 でも結局私は行かなかった。どうせならアウトレットではなく正規ショップで買いたい!と見栄を張ってしまったのだ。

 善は急げでその翌日、私はついに正規ショップに踏み込んだ。いよいよ時は来た。私はブランドバッグ持ちになる固い決意でそこに入ったのだ。
 けれども私が欲しい車輪柄のバッグがお店にない。もしかしてもう売り切れてしまったのだろうか。私は慌てて店員さんに「車輪柄で持ち手がシルバーで......」と説明をした。店員さんは「ああ、そちらの柄でしたら」と、にこやかに私に告げた。

「それは当店ではお取り扱いがないものです。アウトレット店限定デザインでして、ここから一番近いお店は、幕張ですね」

 ......手を伸ばしても、哀しいくらいすれ違ってしまう。まるで運命にからかわれているかのようだけれど、私はいつか本当にCOACHバッグを手に入れることができるのだろうか!?

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