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天才の石、2800円。

文・内藤みか

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 娘がパワーストーンに凝っている。専門ショップを教えてあげたらたちまちハマり、ひとつひとつの石の効能まで覚え始めた。

 そしてこのたび彼女がブレスレット用に選んだのは、フローライトという、私も知らなかった鉱石だ。お店の人によると、集中力がつくと言われているため、受験のお守り石として良く買われるという。

 娘も小学5年生。いよいよ中学受験に真剣に取り組む気になったのかと思ったら、それだけではないらしい。フローライトは「天才の石」と言われ、才能を引き出し、人間関係も良くなるのだとか。

 ひとつひとつ石の粒を選んでオーダーするので、ブレスレットは2800円もかかった。 子どものアクセサリーにしては高額だけれど、彼女は「どうしても今欲しい」とねだった。3日後に、原宿で彼女の絵が展示される。その時のお守りにしたいというのだ。

 何かの気休めになるのなら、と買ってあげたのだけど、近くで見るとフローライトという石はシャボンのようにふんわりした透明度があり、青や緑や紫など色もさまざまで、とても美しい。

 しかし、展示会当日、事件は起きた。会場の熱気にのぼせて、娘が鼻血を出してしまったのだ。

 トイレで止血を試みたのだけど、個室内も蒸し暑く、なかなか治まらない。結構な流血で、手首にもぽたぽたと落ち、フローライトにも、ブレスレットをつなぐ糸にも血がうっすら染み込んでしまったのだ。

 少し汚れてしまったそれを、娘は「それでもつける」と言い張りそのまま会場に戻った。iPadで似顔絵を描く娘のコーナーは終始人気で売上は8000円にものぼった。

 そして展示終盤、大きなリュックを持った男性が娘の前に立ちはだかった。なんと韓国の美術館の館長さんだという。日本旅行中に偶然ここに立ち寄ったのだとか。

「とても興味深い。韓国の子どもたちもiPadで絵を描きますよ」
 と、彼は何枚もポストカードを買い、連絡先も教えてくださった。

 素敵な偶然に目を丸くする私に、娘は得意げに、
「石をつけてたからイイことあったよ♪」
 と小鼻にまだ鼻血がうっすら残った顔で、にっこりした。
 いいことが起きますようにと願うとやはりいいことが起きるのだなあと私は感心しながら、ウェットティッシュで娘の顔を拭ってやった。


(更新 2011/9/ 8 )


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プロフィール

内藤みか(ないとう・みか)

 小説家、エッセイスト。山梨県出身。デビュー当時「ケータイ小説の女王」の異名をとリ、現在も電子書籍サイトのダウンロードランキング常連。「年下男恋愛」「イケメン」についてのコンテンツを作り続け、「イケメン評論家」としても活動。近年はイケメン恋愛ゲームのシナリオや、芝居の脚本も手がけるように。『夢をかなえるツイッター』などSNSに関する著作も。近著に『誰も教えてくれない Facebook & Twitter 100のルール』。twitterアカウントは @micanaitoh

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