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仲直り、6800円。

文・内藤みか

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 ある20代の男の子と、つまらないことから口論になった。時々こんなことが起きる。夢があるとか言いながらも何も努力をせず、女の子と遊んでばかりいるような男の子を見ると、私はどうしても叱ってしまうのだ。

 最近の男の子はおとなしく、叱られることが少ないからなのか、怒られるといたく傷つく。もしくは逆ギレする。今回の彼は逆ギレし、気まずい状態が2週間も続いた。このままずっと音沙汰がないかもしれないと思った。実際、ケンカして連絡が途絶えた男の子も過去にいた。

 しかしご縁があるのか、彼とはそうはならなかった。彼しか持っていないDVDが必要となり、私は彼が住む駅に向かった。

 彼は真っ白い一張羅のシャツを着て、まるで切腹でもするかのように唇をきつく結んで現れた。そしてDVDを受け取ってからもお互いになんとなく去りがたく、結局彼とランチをした。

「もう、会ってくれないかと思った」
「それはこっちのセリフだよ」
 彼は静かな声でそう言った。もう見限られたのではないかと不安だったらしい。

 それなりに反省したらしく、これからは自分なりにマジメに生きていきたい、仕事探しもして自活したいとも。私は感動した。だから、彼が「今日はカネを全然持ってない」と言うので、ランチ代の2千円をおごってあげた。

 さらに帰り道に通りかかった店で彼に4800円のTシャツをプレゼントした。首のところがよれよれになったような服を着ていたからだ。合計で6800円。仲直りの代金としては少し高い気がしたが、しゅんとした彼に母性本能を刺激され、財布のひもが緩んだのだ。

 けれど翌日、早くも友達と遊びに行き、はしゃいでいる彼の様子がブログに公開されていた。食事も結構豪華なものをしかも自腹で食べたらしい。私にはお金がないと言っていたけれど友達との遊びに使うお金はあるらしかった。

 彼は反省をしているフリをしていただけなのかもしれない。本当は私はただの金づるなのかもしれない。考えると悲しくなるからもう考えない。とりあえずあの日、彼はしおらしい顔をして私のそばにいた。それだけでも6800円を支払う価値はあったのだ、と自分に言い聞かせるしかない。


(更新 2011/6/16 )


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プロフィール

内藤みか(ないとう・みか)

 小説家、エッセイスト。山梨県出身。デビュー当時「ケータイ小説の女王」の異名をとリ、現在も電子書籍サイトのダウンロードランキング常連。「年下男恋愛」「イケメン」についてのコンテンツを作り続け、「イケメン評論家」としても活動。近年はイケメン恋愛ゲームのシナリオや、芝居の脚本も手がけるように。『夢をかなえるツイッター』などSNSに関する著作も。近著に『誰も教えてくれない Facebook & Twitter 100のルール』。twitterアカウントは @micanaitoh

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