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高校受験料、合計144,000円。

文・内藤みか

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 とうとう息子の高校受験が終了した。受験料だけで14万円もかかった。全部で7校受験して今のところ3校合格している。1校しか受からなかった中学受験の頃に比べると夢のようである。

 さてこの7校のうち3校に、息子はとあるものを忘れて向かった。とあるものとは、実は受験票である。私にはあまり罪がない。出かける息子に「受験票は持った?」と声はかけている。そしてヤツは「持った」と返事をしているのだから。思春期なのでカバンを開けて中を確認などさせてはくれない。私はやるだけのことはやってるつもりである。

 それなのに息子を送り出し、リビングのソファーの上に、または息子の勉強机の上に、ハガキ大の紙片を見つけてしまった時はショックでへたりこみたくなる。受験生が受験票を忘れてどうするというのだろう。しかし息子はひょうひょうと受験票を再発行してもらい、彼なりに学校の様子を観察していた。

 質実剛健な男子校は、無言で新しい受験票を渡してくれたという。そして公立高では「キミ!場合によっては不合格になるんだよ!」と叱られたそうだ。それはそうだと思う。受験票を忘れるなんて、あまりにだらしなさすぎる。叱られて当然だと私も思う。

 しかし。伝統を重んじるとある有名校の態度は違った。「こんなことは採点には全く関係ないからね。安心して試験を受けてらっしゃい」と励ましながら、再発行された受験票を渡してくださったそうだ。この学校こそこんないいかげんな生徒がいたら速攻で落としそうなので意外だった。

「受験票を忘れたことへの対応に、学校のカラーが出ているよね。同じことしても叱りつける学校もあれば、落ち込まないよう励ましてくれる学校もある。僕は励ましてくれる学校のほうが合っている」

 まるで自分が受験校に試験を課しているかのような態度に呆れたけれど、彼の観察眼はなかなか鋭い気がした。

 そして結局息子はこの3校のどこにも進学しなかった。彼を励ましてくれた伝統校からは合格をいただいたにも関わらず、結局本人が大好きな数学をより深く学べそうな学校に行くことになった。この学校には受験票はもちろん何ひとつ忘れ物はしなかった。つまり彼はそこに本気で行きたかったのだなと妙に納得した私なのだった。


(更新 2011/2/24 )


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プロフィール

内藤みか(ないとう・みか)

 小説家、エッセイスト。山梨県出身。デビュー当時「ケータイ小説の女王」の異名をとリ、現在も電子書籍サイトのダウンロードランキング常連。「年下男恋愛」「イケメン」についてのコンテンツを作り続け、「イケメン評論家」としても活動。近年はイケメン恋愛ゲームのシナリオや、芝居の脚本も手がけるように。『夢をかなえるツイッター』などSNSに関する著作も。近著に『誰も教えてくれない Facebook & Twitter 100のルール』。twitterアカウントは @micanaitoh

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