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似顔絵、プラス5100円。

文・内藤みか

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 先日東京ビッグサイトにて行われたデザインフェスタで娘が初出展した。前回のフェスタに行った際に「次はお店を出したい」と言っていたのが本当に実現してしまったのだ。出展料は2万円もするけれど知人がブースの片隅を貸してくれたので、格安で参加できた。

 娘はこの夏、私が開いた写真展の片隅でポストカードを販売し、その時に12枚合計1200円も売れたことに味をしめたのか、今回は1人300円で似顔絵屋をすると言い出した。それもなぜか筆ペンで描くという。
 絵描きらしくベレー帽をかぶって娘は会場に向かったが、私はとても心配だった。こんな何の実績もないおチビさんにお金を出してくれる人は、果たして現れるのだろうか。

 でもそれはどうやら杞憂だったらしい。娘は着いた途端、まだ道具も出していないうちから、通りかかった子連れの女性に「あらっこんな小さな子が似顔絵を。うちの子を描いてちょうだいな」と依頼をいただいた。それから想像以上にお客様が続き、3時間で娘がグロッキーとなるまでになんと17人、合計5100円も稼いでしまった。時給にしたら1700円なのだから9歳のくせに大したものだ。

 小さな娘がちまちまと似顔絵を描いている姿を、外国人を始め多くのカメラを下げた人が撮っていった。けなげに働く子どもの姿はそれだけでアートだと言われていた。

 私は常々子どもたちに「自分で仕事を創れ」と教えている。仕事というのは見つけてくるものではなく、自分で創るのだと。厳しいようだけどお小遣いもあげない。すると子どもたちは自分の能力をどのようにしたらお金に換えることができるか本気で考え始める。

 今回の似顔絵屋でも娘は娘なりに自活の道を探っているのだと思う。帰り道に「来年も似顔絵屋やる?」と聞いたら「もうやらない」と答えた。「来年は5年生だしもっと大きくなるから、今年ほど儲からないと思う」というので笑ってしまった。オトナには4年生でも5年生でも大した違いじゃないのだけれど彼女には大きな問題なのだろう。

 翌日、娘に地元の小さな絵画コンクール入選の知らせが届いた。似顔絵屋、コンクールと少しずつ成功体験を積み重ねながら娘が力をつけていってくれることを願っている。


(更新 2010/11/11 )


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プロフィール

内藤みか(ないとう・みか)

 小説家、エッセイスト。山梨県出身。デビュー当時「ケータイ小説の女王」の異名をとリ、現在も電子書籍サイトのダウンロードランキング常連。「年下男恋愛」「イケメン」についてのコンテンツを作り続け、「イケメン評論家」としても活動。近年はイケメン恋愛ゲームのシナリオや、芝居の脚本も手がけるように。『夢をかなえるツイッター』などSNSに関する著作も。近著に『誰も教えてくれない Facebook & Twitter 100のルール』。twitterアカウントは @micanaitoh