先日、とある人から電子出版の打診をいただいた。その時掲示された利益分配のパーセント、つまり、印税率はなんと50パーセント! 個人事業ではなく、ちゃんとした会社なので、驚いて一瞬返事もできずにいると、先方は「すみません、安くて」と謝ってきて、また仰天した。

 私の歴代高額印税は、紙媒体では12%、そして電子媒体では20%というのがある。電子では、以前40%と言われたこともあったのだけど、かえって恐縮してしまい、いえいえ取ってください、と20に下げていただいたくらいだ。

 物書きの印税というのは、8?10%が平均的であると思う。本に出資してくださった出版社の取り分はもちろん、校正代、挿絵代、デザイン代、印刷代、紙代、それから取次代や書店の取り分、さらに広告宣伝費や倉庫での在庫管理費など、本を売るにはさまざまなお金がかかるものだから、妥当な金額だと思っていた。

 しかし電子書籍の場合、印刷代、紙代、場合によっては挿絵代もかからなくなり、さらに電子なので在庫管理費もかからない。その分著者への印税に上乗せできた、というわけだ。

 今回50%と言われた理由は、電子書店に流通させず、自社配信のみで行うからだという。つまりさらに取次代と書店代が差し引かれるので出版社と儲けを折半できるのだという。近ごろは版元すらも通さず、すべて自分で電子書籍を作成し、配信サイトの取り分だけを支払うという形式も生まれており、配信サイトの取り分は30%であることが多いので、それだと著者の印税は70%にものぼる。だから今回「安くてすみません」という言葉が出てきたというわけだ。

 著者は今までと変わらず、ひたすら文章を書いているだけなのに、媒体が変わるだけでこんなにも印税率が違うので、ちょっとぽかんとしている。何しろ今まで1000円の本を1冊売って自分の取り分が100円だったものが、500円になるのだから。

 ただ、紙の本と違い、認知度もまだ低いし、ユーザーも多くはない。まだまだこれからだとは思う。けれど、私は喜んでこのお話をお受けした。さて何冊売れるのか、実際に50%印税を受け取った感触はどんななのか、今後が楽しみである。