不登校、0円。

内藤みか
 うちの息子がなんと3年連続で全国中学数学大会ファイナリストとなった。が、困ったことに、その翌日から不登校になってしまった。

「どうして勉強するのか意味がわからない。それにどうして学校に行くのかもわからない。勉強する意味を探しに、旅に出たい」
 というのである。
 旅ってどこへ!? と驚愕する私に「いや、隣の駅だけど」ときょとんとしている。自転車での移動距離を伸ばすことに最近燃えているようだ。

 彼も男だ。長い人生、旅に出たいと思う時もあろう。しかしなぜそれが、受験の時に最も大事と言われる中学3年の1学期なのだろう。この時期の内申点が入試で重要視されるというのに、学校を休んでしまったら、ああ、点数はどうなってしまうのだろう。それなのに息子は「なんか学校が納得できない」と登校しなくなってしまった。

「なんか僕、土佐を脱藩した坂本龍馬みたい」
 と息子は笑っているけれど、親としては、「そんなことは受験が終わってから。とにかく今は学校に行きなさい」という言葉を呑み込むのが精一杯だった。

 彼は私が作ったお弁当を持ち、自転車にまたがると、隣駅の図書館に向かう。そこで何をしているかというと、塾の宿題に取り組んでいる。
「僕は不器用だから中学の課題と塾の課題、両方はとてもできないよ。だから塾に集中したい」

 今まで両方で宿題をドンドンと出され、頭が大混乱して何もかもが中途半端だったというのだ。
「ちょっと待って。だったらお金がかかる塾を休んで、お金がかからない公立中に行けばいいのに!」
「うん、でも塾のほうが友達が大勢いるから」
 と彼は言いきった。

 そして息子は街を数日さまよった後に、結論を出した。
「なんで勉強するかはわかった。世界中の人とコミュニケーションする練習なんだよね。でも、なんで中学に行くのかがわからない。中学じゃなくても勉強も人間関係も学べるから」
 ということで彼は今日も学校には行っていない。私はいつの日か、彼がこの状況に飽き、また学校に戻っていくことを期待しているのだけれど、まもなく夏休みを迎えようとしている。

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