iPadの日本での発売が延期になった。4月末のはずが5月末と1ヶ月も延びてしまったのだ。早く欲しくてしかたがなかった私はショックだった。

 しかし未発売だというのに日本でiPadを持っているという人が何人もネットに使用感を書き込んでいる。アメリカではすでに4月3日に発売されているため、わざわざ現地に買いに飛ぶなどして入手したらしい。

 少しでも体験したい私は、ツイッターでこうつぶやいた。「どこかiPadが展示されていて、デモが観られたるところはないでしょうか」
 すると、僅か3分後にiPadを持っている雑誌オンライン書店Fujisan.co.jpの相内さんからリプライがあり、3日後に見せてもらえることになった。もともとの知り合いだったとはいえ、あまりの反応の速さにビックリした。

 晴れて対面したiPadは、想像以上に薄く、小さく、けれどインターネットや音楽鑑賞など、PCでできることの多くはそれでできた。
 さらにiPadで話題となっている電子書籍「不思議の国のアリス」も閲覧した。こちらの手元の揺れに伴って揺れ動く懐中時計や、バラバラと落ちてくるジェリービーンズなどが、かなりリアルで精巧な作りだった。

 今までにも幼児用のオンライン絵本などにはこうした仕掛けはあった。こちらがクリックすると主人公が動き出したり、鍵盤を押すと楽器が鳴り出したり、次のページをめくると風船が飛んでいったりと。アリスはその進化した形とも言えるかもしれない。これは絵本というには文字が多いということもあり、電子絵本だけでなく、電子書籍全般に双方向的な可能性があることを示してくれた。

 私はケータイ小説でヒロインのセリフだけ色を変えるなどいろいろ実験してきたので、iPadでも何か実験をしたくてしかたがなくなった。
 しかしFujisan.co.jpの社員さんの「結局は面白いコンテンツが必要だということは変わらない」という言葉が一番胸を打った。そう、私の仕事は奇抜な仕掛けを考えることではない。人の心に響く物語を紡いでいくことで、それは媒体が紙であれ電子であれ変わらないはずだ。

 と言いながらその翌日には友達に私のツイッター小説を朗読してもらい、その様子をiPhoneで動画に記録し、ユーチューブにアップしていた。根っから電子大好きの私は、やっぱりiPadで何かしてしまいそうな気がしてならない。