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市場での品定め、3000円。

文・内藤みか

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最近、「ららぽーとTOKYO-BAY」という複合ショッピングセンターにはまっている。

日本最大級といわれる540店舗が集う敷地は東西南北の棟に分かれ、それぞれがデパート並みの広さを持つため、地元民でも時々迷ってしまうほどだとか。

巨大な館内には、交通標識のような行き先案内板や、現在地がどこかを示す館内地図があちこちに掲げられ、屋内であるはずなのにまるで街並みであるような雰囲気だ。

そしてショッピングストリートも、デパートのように整然とはしていない。セールの日には、ほとんどの店から店員が通路に飛び出してきて、特売の品を手に持ちながら、大声で客を呼び込んでいる。

「あと3点のみです!」
「タイムセールです!」
通りかかる人々は、一体何がお買い得なのかと足を止め、そこに人だかりができることもある。

この賑わしさに、私はいつも市場を連想してしまう。ほとんどの人は普段、市場とはご縁がない。新鮮な野菜や果物を吟味する日常を失った代わりに、新作の香水を嗅ぎ、流行の洋服の手触りを確かめている。このライブ感こそが、ここの魅力なのだろう。

私はこの間、ららぽーとに行った翌日に、ホストクラブに行った。するとやはり、ホストクラブにも市場らしい感じがあることに気づいた。

ホストクラブでは、初回のお客のもとへ必ずその店のホスト全員が、代わる代わる挨拶に訪れる。「初めてのご来店」なのだから、当然まだ指名ホストもいない。なので「ぜひ自分を指名してもらえませんか」と売り込んでいるというわけだ。初回客の料金は格安で、私が行った店は2時間で3千円だった。

彼らのアピールは千差万別で、本当に面白い。
「もう俺に決めちゃいなよ」
といきなり命令してくるオラオラなホストもいれば、
「君みたいに綺麗な女性は初めて見たよ」
と、おせじを投げてくるホストもいる。

彼らに共通しているのは、客の心をくすぐって、なんとかして自分を選んでもらおうという熱意だ。
そして、ホストをひとりひとり吟味している私もまた、このホットな市場感覚を楽しんでいるのである。

男たちが自分の魅力を競うように売り込んでくる中から、たった一人しか指名できない。これは究極の選択だ。人が人を選ぶ。このなんともいえないスリルをひとたび知ってしまった私は、なかなかこの世界から離れることができずにいる。


(更新 2009/8/ 6 )


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プロフィール

内藤みか(ないとう・みか)

 小説家、エッセイスト。山梨県出身。デビュー当時「ケータイ小説の女王」の異名をとリ、現在も電子書籍サイトのダウンロードランキング常連。「年下男恋愛」「イケメン」についてのコンテンツを作り続け、「イケメン評論家」としても活動。近年はイケメン恋愛ゲームのシナリオや、芝居の脚本も手がけるように。『夢をかなえるツイッター』などSNSに関する著作も。近著に『誰も教えてくれない Facebook & Twitter 100のルール』。twitterアカウントは @micanaitoh

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