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1000円通行料、関係ない。

文・内藤みか

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 山梨県甲府市に帰省した時のこと、子どもたちが回転寿司店に行きたいと言い出した。
 しかし、実家から歩いていけるような場所にはない。そういう店は高速の入り口あたりに、林立していて、そこまでは行くには車が必要だった。
 実母も私も免許がない。しかたなく駅まで歩いてタクシーに乗り込んだ。

「すみませんがバイパスの○○寿司までお願いします」
「○○寿司ぃ?」
 運転手は驚いたように聞き返した。母が、
「お大臣でしょう、タクシーで回転寿司だなんて。車がなくてねえ」
 と笑った。
 私は、笑えなかった。車がないのだからタクシーを使うしか術がないからだ。でも確かに回転寿司店の駐車場に滑り込んだタクシーは、どうも違和感があった。

 山梨では車に乗れないと、不便でならない。別の日に、実母が子どもらを小さな山の上にあるアスレチックに連れていってくれた時は、雨に見舞われた。
 バスの時間まで1時間もあるのでタクシーを呼ぶと、駅でタクシー待ちの列ができているので、山の方には行けないと断られた。実母はあきらめ、ぬかるんだ山道を、傘をさしながら歩いて下山してきたという。よく足を滑らせなかったものだ。

 そんな時、実家に妹一家が遊びに来た。ETC搭載の車は、高速料金を1000円払えば随分遠くにまで行けるようになったという。車に何人乗ってても、たったの1000円だ。
「他にガソリン代はかかるけどさ、随分おトクになったよ」
 嬉しそうに夏の旅行計画を話す彼らが羨ましかった。

 車がない私たち一家は、旅行での交通費の負担が重い。実際春に名古屋に行った時など、全支出の50%が交通費だった。宿はケチれるが、交通費はケチれない。ああ、もし新幹線が1000円均一だったら、どんなに助かるだろう。

 日本には、車に乗らない人はかなりの数いるはずだ。そういう人たちには、今回の高速料金の改訂など、全然関係ないのである。今回の高速代割引で、車を持っている人と、持っていない人とで、行楽格差がグンとついてしまった気がしてならない。エコにも貢献しているノーマイカー族には何の恩恵もないなんて哀しすぎる。

 今度は車がない家庭には、新幹線のチケットを1000円で支給するなんてことになればいいのにな。そしたら博多や青森で子どもといっぱい食べ歩きするんだけどなあ。


(更新 2009/6/ 4 )


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プロフィール

内藤みか(ないとう・みか)

 小説家、エッセイスト。山梨県出身。デビュー当時「ケータイ小説の女王」の異名をとリ、現在も電子書籍サイトのダウンロードランキング常連。「年下男恋愛」「イケメン」についてのコンテンツを作り続け、「イケメン評論家」としても活動。近年はイケメン恋愛ゲームのシナリオや、芝居の脚本も手がけるように。『夢をかなえるツイッター』などSNSに関する著作も。近著に『誰も教えてくれない Facebook & Twitter 100のルール』。twitterアカウントは @micanaitoh

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