娘が犬を飼いたいとあんまりいうので、日曜日に犬の譲渡会を見学に行ってきた。保健所から犬猫を預かり新しい飼い主を探す会があるのだ。

まだペット禁止のマンションに住んでいる身の上なのだけれど、見学もOKということなので、出かけてみた。 

娘が世話をしたがっているプードルは高額で、ショップでは10万円以上はする。けれど譲渡会では無料なのだ。もちろん医療費などの負担が3万円以上かかるけれど。

行って正直、驚いた。

想像以上にプードルやチワワやシーズーなどの人気犬種が多かったのだ。ブリーダーが廃業して、犬を育てることができなくなるケースも多いのだという。保護されたときはやつれて気の毒な姿だったという犬も、里親さんに大切に世話されて毛並みも艶やかになり、愛くるしかった。

こんな可愛い犬達を捨てる人がいるという事実に、子ども達もショックを受けていた。

駅に捨てられていたという茶色のチワワの頭を息子は優しく撫(な)でた。チワワは息子の膝(ひざ)にしがみついて離れなかった。連れて帰ってあげられたらどんなにいいだろう。

しかしたとえ私たちがペットOKの部屋に越しても、必ずそのチワワを育てられるわけではない。里親さんたちの厳しいチェックが入るのだ。特に小さい子どものいる家庭では犬が乱暴に扱われるのではないかと、あまりいい顔をされないということもその日初めて知った。

ペットショップでは「お子様の情操教育のためにもぜひ子犬からお育てになってみては」などと薦められたけれど、この譲渡会は子どものことよりもまず犬の幸せを第一に考えている。そのことにむしろ感動してしまった。

帰り道々息子が言った。

「もし犬を飼うのなら、捨てられた犬を飼おうね」

息子も娘も、子犬じゃなきゃいやだなんていうワガママは一言も口に出さなかった。 先日、子どもたちの父親が38回目の誕生日を迎えた。心をこめてバースデーカードを送ってから一ヶ月近く経つのに、まだ返事が来ない。いい子で待っていても報われないことがあるのを、私の子どもたちはよく知っている。

子どもたちも、犬たちも、愛ある家庭を求めている。だから通じるものがあったのだろう。子どもたちも犬たちも、望んでさみしくなったわけではない。小さくて可愛いものたちにかかっている負担の大きさを考えると、どうにもせつなくなる。