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最近、小学2年生の娘が、やたらと画材屋に寄りたがるようになった。どうも漫画家を目指しているらしい。

おねだりされるものは、Gペン、インク、ケント紙、スクリーントーンと、この年にしてはなかなか本格的。両手をインクでべとべとにしながら楽しげにお絵描きしているが、そのおかげで買ったばかりの真っ白なソファにいくつもの黒い小さな指紋を見つけ、悲鳴をあげる日々である。

娘は近所の高校の学園祭でも漫画研究部の展示に真っ直ぐ向かい、お姉さんたちが描いたイラストを食い入るように見つめている。美術館で名画を見せた時にはつまらなそうな顔をしていたのにこの集中力はすごい。

最近、娘は画材屋の引き出しの中から、とあるものを発見した。それはすでに罫線(けいせん)が印刷されている4コマ漫画用原稿用紙である。10枚で399円のそれを母親に買わせると、彼女は張り切ってストーリーに取りかかった。

夜、彼女が寝静まってから(どれどれ、どんなの描いたのかな?)と机の上を覗(のぞ)いてみて、私はしばし沈黙した。

2人の女の子が、どちらのほうがモテるかと口論をしていた。そして勝負をつけるために、明日の昼までにより多くの男を連れてきたものの勝ち、ということになった。

翌日、ひとりの女の子は世界中から644人もの男性を引き連れてきた。しかしもう一方の女の子は、誰も掴(つか)まえられなかった。敗者はがっくりと肩を落としてこう呻(うめ)く。

「ま、負けた......」

4コマ目を読み終わって、私は心配になった。うちの娘の恋愛観、なにか歪(ゆが)んでないだろうか。男は数がいればいいというものではないのに。ホストクラブで男をはべらすのが大好きなこんな母親のせいで、小学生にして逆ハーレム思想になってしまったのだろうか。

娘よ、男は数じゃない。男は顔だと母は思う! そんな気持ちをぐっとこらえ、翌朝、

「まあ~男の人が大勢集まったのネ☆ 面白いわね☆」

と娘の絵を褒めると、彼女は、他にも描いたのよ、と作品を見せてくれた。

そこにはあっけらかんと離婚し、またすぐに再婚するお姫様のお話があったので、ますます私は困惑した。

母子家庭に育ったこの娘が描くと、離婚はむしろ次の人生への明るいステップのようにも見える。これは不思議だった。なぜなら、彼女の母親、つまり私は、離婚後数年が経過しても次のオトコが現れていないのだから......。