第1415回 アンの体臭に慣らされた私 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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第1415回 アンの体臭に慣らされた私

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アン(白鳥さん提供)

アン(白鳥さん提供)

 帰宅して玄関のドアを開けると、アンは身を丸めるようにして喜び勇んで飛んでくる。そして全身全霊でうれしさを示す。

 彼女はつぶれたペチャンコ顔に大きな目とピンと張った耳が特徴の、10歳になるフレンチブルドッグ(写真)である。近ごろはめっきり白髪が増え、顔に白粉を塗ったようで哀れでもある。

 日課の散歩の時は、がに股で胴体をブルンブルン震わせながら進む。常に私に視線を向け、私の気分を推し量ろうとする。

 私の留守中、「アンはトイレを見に行ったり、外に止めてある車を見たりして、あなたを捜そうとするのよ」と妻は言う。

 妻が私に手を差し出したり、背にもたれかかってきたりするとアンはうなり声を上げて妻に飛びかかり、不快感をむき出しにする。

 食欲旺盛で、自分の皿を空にすると猫の皿に向かう。それからテーブルの横に座り、妻と私が食べる様子を見上げる。欲しい時ほど正座は几帳面になる。

 犬は親しいものとの別れが苦手なのだろうか、アンは、私が服を着替えると外出すると察知して、一緒に行こうと先に玄関に向かう。妻と同伴の時は特に、後れをとるまいと動作が速くなる。

 7年間生活を共にして、アンの存在は日増しに大きくなってきた。

 アンを家に置いて外出すると、アンのことが頭から離れず、落ち着かない。元来、私は犬の体臭になじめず敬遠してきたが、アンの体臭に慣らされたのか感じなくなった。

 愛犬に先立たれ、立ち直れないという人の話を聞いたことがある。アンに接して、飼い犬には人の理性を惑わすものがあるような気がしてきた。アンとのひとときを大切に過ごそう。

(白鳥明信さん/鹿児島県/82歳/無職)

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(更新 2021/3/15 )


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