第1358回 大切な存在になっていた「クロ次」 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)
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第1358回 大切な存在になっていた「クロ次」

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クロ次(渡辺さん提供)

クロ次(渡辺さん提供)

 2年くらい前から雄のノラ猫(写真)が来るようになった。その猫と友達になった母は、名前を付けた。「クロ次」

 鼻水べじょべじょ。口の周りをベタベタにして牛乳を飲む。ノラだからノミがいる。そのためノミ取り薬を買ったこともある。

 汚い黒猫。爪をしまえないノラ猫。

 いつの間にか家に入って、母と昼寝をする身分になっていた。そんなときに家の中で私に出会うと、一応そばまで挨拶に来る奴だった。

 いつもは外で暮らしているクロ次。しかし、家の中で粗相をしたり、悪さをしたりすることは決してなかった。

 朝窓を開けると、窓の下の草むらで「ヴニャ」と、少しかすれた声で必ず挨拶をする。餌は外でやるので、そのときだけ私についてきて、閉まるドアにはさまれそうになるクロ次。母は一緒に昼寝をし、クロ次をスケッチしていた。

 お盆の15日、母がいつものように窓を開けて草むらのクロ次に声をかけていた。「あれ? 寝てるわ」。母が言った。

 クロ次は、いつもの草むらで、いつもの姿勢で、動かなくなっていた。

 何をしていてもクロ次の話になる。昨日まで、ここにゴロンとしていたのに。毛が付くからコロコロも買ったのに。いつの間にか、クロ次は大切な存在になっていたことを思い知らされた。

 母の心に、大きな穴。私の心に、大きな穴。

 びっくりしすぎて、悲しいのか寂しいのか訳がわからなくなりながら、クロ次が眠りについた場所に母と二人で墓をつくった。墓石がわりのブロックに母が、昨日までスケッチしていたクロ次の顔をアクリル絵の具で描いた。

 クロ次、ここに眠る。

 クロ次、ありがとう。

(渡辺聡子さん 栃木県/43歳/公務員)

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(更新 2020/1/24 )


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