「ワンニャン婚活」なるものに参加した。ただし、これは犬たちのお相手探しではない。犬猫の飼い主たちのためのものだ。

 参加条件は、男性:当日、飼い犬・猫を連れてこられる人、女性:動物が好きな人なら誰でも。条件が年収や職業で制限されたガツガツギラギラした婚活より、よほど好感が持てた。

 30の大台に乗り、将来のことを聞かれても、なかなか婚活に前向きになれなかった私だが、「動物が好きな人」という条件は満たしている。早速申し込んだ。

 可愛いワンニャンと触れ合えるだけでもいい、という気持ちもあった。若い女性がホテルのフレンチ目当てに見合いするような、本当に軽い気持ちだった。

 ところが、会場で私は久方ぶりに一目惚れの恋をした。男性にではない。男性が連れていた雄の柴犬(写真、名前はラン、年齢不詳)にである。

 聞けば、東日本大震災で元の飼い主を亡くした犬を引き取ったのだという。最初は栄養が足りておらず、ひどくやせていたらしいが、今は健康的なしなやかな肢体をしている。

 飼い主と住環境が変わったことに対するストレスも大きかったらしいが、今ではおなかをマッサージしてもらうのが大好きな甘えん坊とのこと。

「前の飼い主さんのしつけが行き届いていたのか、散歩のときも僕のつま先を越えることはないんですよ」と、相好を崩して語る彼は親ばかな新米パパのようで、私はビビッときた(古い?)。

 男性は犬の頭を優しくなでながら、「原発の放射能を浴びているかもしれないが、一日でも長生きしてほしい」とも語った。

 健やかなるときも病めるときも──。かくして、一人と一匹の“婿入り”の日が、やがてやってくることになった。

(広瀬智子さん 滋賀県/33歳/高校講師)

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