ある日家に帰ったら、ねずみ色の子がいました。

 近くのホームセンターで買ったと家内から事後報告がありましたが、値段は明かされずじまい。娘夫婦が猫を飼いだしたのに影響されたのだ、とすぐわかりました。

 犬も猫も、両方とも十数年前になくし、もう飼わないと決めたはずでした。でも、今やシニアの2人暮らし。散歩の必要のある犬はともかく、猫を迎え入れることに異を唱える理由はありません。

 ですが、私は感じたまま落胆を口にしました。

「前にいたミミと同じねずみ色だ」

 先代の猫ミミは雑種で、毛の模様が違うだけで、やはりねずみ色でした。なので新鮮味がなく、どうせ飼うなら茶系の猫がよかったのです。が、後の祭り。飼うことへの了承と聞き流されただけです。

 名前もすでに命名ずみで、「ブルマ」(写真、雌)。漫画「ドラゴンボール」の登場人物からとったといいますが、運動会の女子の黒いパンツのような名前は呼びにくく、私はブーかブル。

 飼いだして3年あまり。今度の猫ブルマは、餌をやり、文字通り猫なで声で接する家内にまとわりつくこともありますが、だいたいは攻撃的でダッコが嫌い。少しでも気を抜いて頭をなでていると、電光石火の早業でフックを繰り出します。

 シカという感覚が手に走り、皮膚には白い線が。やがてそこから赤いものがジワジワとしみ出し……。

 猫パンチという言葉には肉球のソフトな感触も伴いますが、フックには恐ろしい爪の切れ味が。

 ペットは飼い主に似るといいます。ブルのフックは、さしずめ家内の日頃の私への憎まれ口。カリカリ以外の餌だと周りを食べ汚すところは、ご飯をよくこぼす私のようです。
(渡辺秀明さん 愛知県/69歳/アルバイト)

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