「どっちに行きたい? エレナくんの行きたい方、行っていいよ。ママついて行くよ」。お散歩の曲がり角でエレナ(写真、雄)が立ち止まるたび、ママはそう言ってエレナをなでました。

 極太リードの先に大きなエレナがいなくなった今、ママはどっちに行ったらいいのかわかりません。

 エレナはどこへ行くのか。死んだらどこへ行くのか。

 答えてくれないまま、エレナは今年の3月、逝ってしまいました。

 エレナは雪が大好きでした。神奈川県の箱根で生まれたエレナをこんな遠い寒いところへ連れてきてよかったのかどうか、ママはずっと迷っていました。

 けれども、「一回も箱根に帰してやれなくてごめんな、こんな遠くまで連れてきてごめんな。エレナくん幸せかい」と尋ねるたびに、エレナは穏やかな顔をして、ぺろりとママをなめました。せめてエレナが不幸でなかったらいいと、いつも、今も、ママは願っています。

 エレナは、自営業のわが家の事務所が大好きでした。プール(大きなたらい)つきの豪邸(庭の一角)を持っていたのに、バウバウ(事務所に行く)、とほえるのです。そして、事務所に入れてやると鳴きやんで、満足そうに秘書のお仕事(お昼寝)をしていました。

 外耳炎以外病気をしたことのなかったエレナにがんが見つかったとき、すでに手の打ちようはありませんでした。もうすぐ迎えるはずだった13歳の誕生プレゼントに買った大好物の缶詰は、エレナの命が尽きる2日前の朝、ありがとうと言って開けました。

 エレナはどこへ行ったのか。死んだらどこへ行くのか──遠いいつか、極太リードの先に40キロの重さをもってママに答えをくれ、導いてくれるのは、やはりエレナであるような気がしています。

(関はな江さん 秋田県/46歳/無職)

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