第1319回 鍵をちょいちょい、恋に落ちた 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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第1319回 鍵をちょいちょい、恋に落ちた

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 出会いとは不思議である。

 猫の魅力にとりつかれ、いろいろなペットショップに足を運んでいたある日、出先にペットショップがあることを知り、ふらっと立ち寄った。そこで生後半年ぐらいの猫と出会った。

 初めて見る顔と柄。毛も少なく細い。どうやらシンガプーラという種類らしい。ずっと見つめていると、店員さんに声をかけられた。

「よかったら抱っこしてあげてください」

 この言葉は幾度となくかけられてきた。しかし、その猫の反応は他とは違った。とてもおとなしいのだ。脱走防止のリードをつけて渡されたのだが、腕の中から逃げようともしない。

 テーブルにおろすと、私の腰にぶら下がっていた鍵をちょいちょいして遊びだした。その瞬間、恋に落ちた。いつか縁があれば猫を飼いたいと思いながら過ごしてきた、2年目の冬のことだった。

 しかし即決できる金額ではない。「少し考えさせてください」。そう私は言うと、店内をぶらぶらしながらどうすべきか考えていた。

 すると、リードをつけられている猫が珍しいらしく、お客さんが次々にその猫の元にやってくるではないか。そして猫もうれしそうに愛嬌を振りまいている。

 ちらほら「飼いたいなぁ」という声も聞こえてきた。このままではマズイ。そう頭に浮かんだ次の瞬間、大勢の客をかき分け、店員さんに「その子、飼います!」と宣言していた。

 その時の私はまるで、結婚式当日に花嫁を奪還しにきた男のようだった。

「やえ」(写真、雄)と名付けたその猫を溺愛している。一緒に住んでもう1年が過ぎた。私が生涯で一番発している言葉はママでもなくパパでもなく、「やえ」である。これからもきっとその記録は塗り替えられることはないだろう。

[橋本龍弥(りょうや)さん 東京都/26歳/会社員]

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(更新 2019/4/ 5 )


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