ヘソの緒がついたまま捨てられていたの3兄弟のうちの2匹が、獣医を介してわが家に来たのは14年前。ホクロ模様が鼻の右か左かで見分けるほどよく似た可愛い美男子たちです。

 私たちの7、8番目の猫なので、長七郎(写真左)、源八郎(同右)という時代劇の登場人物のごとき名前です。勇敢な長ちゃんと甘えん坊の源ちゃん。ぴったり身を寄せて眠り、閉め忘れた窓から脱走するのも一緒でした。

 私が休んでいた合唱団に復帰し、演奏会に向けた練習に励んでいた昨夏、源ちゃんの腎機能悪化が判明し、治療が始まりました。

 が、見たところはいつもと変わらず元気そうでした。9月末の本番を無事に終え、幸福感いっぱいで打ち上げパーティーから帰宅した私を待っていたのは源ちゃんの病状急変でした。

 まるで演奏会の終了を待っていたかのように、翌日から一切餌を受け付けず、毎日自宅でする補液注射で命をつなぐ日々です。

 人間よりずっと短い猫の寿命。それを考えると、3週間余り食べられない苦しさはどれほどだったでしょう。それでもちゃんとトイレに行き、甘えて私の足元にすり寄ってきます。やせ細り、パタンと横に倒れてしまうのに、最後まで力を振り絞って頑張った源ちゃん。甘えん坊の芯にこんな強さを秘めていたなんて。

 そして10月24日、源ちゃんは天国へ旅立ちました。その前日、涙しながらなでる私を、一生懸命見つめていた顔を忘れることができません。

 長ちゃんもしばらくの間、源ちゃんを捜しているようでした。トシのせいか、私は今も源ちゃんロスからなかなか立ち直れません。それでもまた9月の演奏会に向け、練習に通っています。源ちゃん、そんな私と長ちゃんを見守っていてね。

(中尾和子さん 東京都/72歳/主婦)

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